ミライノオト

にゃんだふる

蒼介、入学る。

4月6日。


待ちに待った高校生活、ついにその扉が開く。


レベルの高い部活。

可愛い彼女。

友達と一緒にファミレスなんかに行ってやるテスト勉強。

中学では出来なかった、「オトナっぽい」行動の数々。

楽しみでたまらなかった。


春休みはそんな最高の高校生活を夢見ながら、スタートダッシュを失敗しない為に勉強にバスケに時間を注いだ。


「おい、クラスどこだった?」

「げ、違うクラスじゃん。」

「あ、アタシ一緒だ。」

「きゃー、やったね!よろしく!」


クラス表が貼られた掲示板の元には、既に沢山の生徒が集まり、自分の名前を探していた。


中学の友達と共に喜び、笑う者。

好きな子と離れ、絶望に打ちひしがれる者。

どうでもいい、といった風に表情を変えない者。


これも高校生活の醍醐味であろう。


だが!


俺は、断じてどうでも良くなどない!


充実した高校生活を送るためには、スタートが大事!


つまりは、1年のクラスメートが誰になるか、これが重要なのだ!


表情は落ち着き払っているが、俺、飯村蒼介は高校生活を理想的なものにすべく、燃え盛っていた。


「えーと、俺の名前は………。」


自分の名前を、端から順に探す。


「あ、蒼介じゃん。クラス探してんの?」

「お?なんだ那月か。」

「なんだとは何よなんだとは。」


後ろから話しかけてきたのは、幼稚園からの付き合いである荒川那月だった。


いわゆる幼馴染、というヤツだ。


サバサバとした性格で、男女ともに好かれる、デキる女だ。


「あんた、私と同じ2組よ。ほら、あそこ。」


指さされた先を見てみると、確かに自分の名前と那月の名前が並んでいた。


「よりによってお前と一緒かよ………。」

「何でそんなに嫌がるのよ!」

「いや、もう7年連続だぞ?仕組まれてるんじゃないのかこれ………。」


那月とは、かれこれ小学校4年からずっと同じクラスだった。

さすがに出来すぎじゃないかと思う。


「別に、いいじゃない、一緒でも………。」

「あ?何か言ったか?」

「何でもないわよ!ほら、教室行くわよ!」

「へいへい。」


元気な幼馴染に手を引かれ、教室へと歩いていく蒼介だった。


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