〇〇ですよね?

花本真一

第1話 ○○ですよね? 花本真一

今から一年前、僕は就活生でした。その時に体験した少し変わった出来事をお話しします。

 就活解禁の三月まで、あと半年を切った九月の中旬。本格的に準備を進めるために大学の就職相談課に毎日通う日々を送っていました。

 受付で申請をして担当のスタッフと履歴書の作成方法や企業・業界研究を行うのが流れです。

 ただ、受付に行くたびに言われる事がありました。それは。

「お願いします」

「はい、分かりました。公務員の方ですよね?」

 え? 何故に。

 僕は一般企業を主体に考えて、就活をしょうと決めていました。だけど、こっちが何か言う前に公務員と決めつけてくるのです。

 しかも、ですよね、と言うことは確定事項だと言う事になります。

 それだけ、僕のルックスが公務員に近かったと言う事なのでしょうか。でも、公務員に近いルックスって一体?

 公務員と言われるたびに、違います、と返す日々でした。基本そのまま相談に移れるのですが、たまに面倒くさいこともありました。

「公務員ですよね」

「いいえ、一般企業です」

「え、どうして公務員じゃないの。どうして?」

 何か、公務員を目指していない僕が悪いような言い方をされることもありました。理不尽です。

 待合室で勉強していても、スタッフから。

「公務員の勉強頑張れよ」

 と言われたりもしていました。

 まぁ、こんな流れも二か月くらいで収まりました。

 だけど、公務員の下りはまだ終わっていなかったのです。

 他己分析と言う、友人や先生、家族に対してどんな仕事に向いているのか、を聞く作業の時も八割近い人が公務員と答えてきました。

 更に、就活解禁の面接官にも。

「公務員と併願されていますよね」

 こう聞いてくる次第であります。どうなっているのですか。

 ここまで来たら、自分のどこが公務員っぽいのか気になってきました。

 確かに周りからは老け顔と言われることが多かったです。無精ひげも多かったから。

 自慢になりますが成績優秀賞と奨励生に選ばれたことからも自他ともに認める真面目人間でした。

 だけど、僕自身が公務員に興味がなかった以上、それを言ってくれる人々に対して、申し訳なく思う気持ちもありました。

 中には、ルックスだけは完璧なのに、と少し辛辣な言葉をいただくこともあったり、ちょっとショックでした。

 ただ、某企業の人事から、公務員に向いている=最高の誉め言葉、と言ってくれました。

 今まで、言われるがままの印象が多かった分、素直に嬉しかったです。

 ちなみに今の就職先はその人事がいる施設です。

 まぁ、その人事の方とそれ以来会ってはいないのですが。

 だけど、公務員の呪いはまだ続いています。

 たまに職員と話すときも。

「公務員に向いてそうなのに、もったいない」

 と言われます。

 どうにかしてください。

 

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