9 二人ぼっちの絵日記

過ぎないで夏の日 止まないで蟬時雨

まぜこぜの感情で願った夕暮れは 今は遥か遠く

過ぎないで夏の日 止まないで俄雨

届かなかったものが掌から こぼれ落ちていく


このまま季節が終わらなければ

このままここで雨宿り

それが叶わぬ願いでも

秋風に流されるぐらいなら


そうして 気づけば立っていた

八月三十一日の 続きの頁に

誰も彼も 走り去っていた

いつの間にやら さよならも言わず


もう 今があればいいなんて

言えなくなってしまった

君の視線が静かに傾ぐのを

僕はいつからか 直視できない


またこの季節がやってきて

瞬く間に過ぎていく

陽炎の向こうは 果てのない一本道

何も持たない二人の逃避行

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朝まだき 常磐真幸 @lovely_day

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