朝まだき

常磐真幸

1 地平の果て

歩けど歩けど

歩けば、歩くほど

果てには何もないということに気づいてしまうのは、おそらく

彼女が何も知らなかったからではない


そこにあったものはもう、とうに消え去ったというのに

それを黙々と否定し続ける自分を

少しずつ手にかけている、その現れなのだろう


碧眼は地平を見つめている

夕陽が少しずつ大地へと溶けていく

もう全て、想像がつくことだ


彼女はいつか、この夕景に飽ききって、足を止める

天上の星空に飽ききって、眼を閉じる

焼けるような暁天にも、きっといつか


泣くだろうか、笑うだろうか、ため息をつくだろうか

全て想像がつくことだ

その瞳が映すものはきっともう、全てが濁った世界だろう


そこにはもう何もない


空っぽに笑う、日が沈む

諦めに似た不完全な笑みで、また一日が終わる

憧憬の欠片が、星空に散っていく


そうやって、滝のように流れ落ちる時間だけが

僕たちを、ここではない何処かへ

ただひたすらに、運んでいく

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