日々の詩

白Ⅱ

第1話「私の本」

 まだどこにもない本を私は探している。

 まだ誰のものでもない本を私は探している。

 それはどんな大きな図書館にも、街中の本屋にもない本。

 私はそれを探している。

 たまにそれは見つからないのではないかとも思う。

 けれど、諦めずに探していると手がかりを見つけることができる。

 それは秋の空の清々しさ。

 それは冬に近づく夜の風の冷たさ。

 それはキンモクセイのかおり。

 それは偉人たちの格言。

 それは世界の秘密を記した謎めいた数式。

 そういったものを見るとき、私の中にあるその本が、少しだけ、その重いページを開くのだ。

 だから諦めてはならない。

 私は今日もそれを探す。

 まだ、書かれぬ私の本を探す。

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