第2話 2120/3/16

二日間は母の許で時間を過ごした。母は、幼いころに孤児院で暮らしていたために、僕には親戚というものは遠い世界の話に感じている。親戚の誰かが見舞いに来るとは思わなかった。途中、母と同じ孤児院で育った人たち、僕にとってはあかの他人だけど、母にとっては肉親だと思える仲間たちが、見舞いに来た。

そのことは、予想外であった。

「茉帆、一体どうしたのよ。こんなことになってしまうなんて。」

「おい、しっかりしろ。今度施設で一緒だったみんなで会食しようって言ったやないか。」お母さんの愛されぶりがよく分かる。もう考えないことにしていたけど、感情が抑えられなくなる。

涙が出そうになる。

「息子さんも。お辛いでしょう。泣いても良いんですよ。」

「ええ。いや、この現状もそうですけど、母は愛されて幸せだなぁと思いまして涙が出そうです。僕は明後日には職場に戻らなきゃいけないんです。でも、本当は居れるならずっと居たいです。僕にとって唯一の親ですから。」口ではそうは言うものの、内心はここにいれば余計に辛いのだ。だから、1日でも早く戻りたいと思っている。しかし、そんなことも言えない。

「それは、お辛いでしょう。でも、私たちはこちらで茉帆のことを見守っております。心配しないで下さい。」

「ありがとうございます。母を宜しくお願い致します。」

その日はいくらかその現実を感じることが出来た。


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