ホシイモノ

トナカイ

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 お互い恋人と呼べる人は別に居て。

 だから、恋人ではない。

 でも、知り合いというほど薄い付き合いでもない。

 暇になったら会って遊んで。次会う約束もしないで別れる。

 知っているのは電話番号。

 街を歩くわけじゃない。もっぱら室内、オトナの付き合い。

 そんな、微妙な関係の俺達。


 そこそこモテる方だと思う。

 高い身長、一応モデル。少し長めの金髪に、甘い言葉と甘い顔。

 大体の女はおとしていける。だけど、それだけ、ほんとに欲しいものなんて、手に入らないのもわかってる。

 街を歩けば囁かれる、そのくらいには知名度もあって。

 俺、ショウ・S・クオンタム。今年で19の、大学一年二十歳前。



 お互い、恋愛対象にはならない。

 付き合う人はいつも別。

 電話番号しか知らないし、次会う約束すらしない。

 暇になったら会って遊んで、カラダの付き合い、ご愛嬌。

 恋人じゃない、友達じゃない。

 そんな、微妙な関係のあたし達。



 まぁまぁモテる方だと思う。

 平均的な身長に、ちょっと痩せめの体付き。一応モデル。セミロングの明るい茶髪、ブラウンアイズに穏やかな顔。にっこり優しい笑顔を浮かべて、心の中じゃ冷めている。人付き合いはなあなあで。

 街を歩けば囁かれる、そのくらいの知名度もある。

 あたし、水瀬聖。今年で17、高校生。



「あ、聖?」

 電話の相手はいつものあいつ、今日は俺から次のお誘い。

「今度の水曜、空いてる?」

 返事を待って約束をとりつけ、ただそれだけで電話を切る。

 もう慣れたこと。

 しばらくその場で待っていれば。

「ショウ?」

 かかる声に振り返る。にっこり笑顔を忘れずに。

 今のコイビト、同い年。なかなか可愛い顔してて、平均的なカラダツキ。

「ごめんね、待った?」

「いや、そうでもないよ。俺もさっき来たとこだし」

 この辺の気配りは、いい男の条件。

 もっとも、別に良く見られたいとは思わない。

 そろそろ乗り換え時かもな。

 欲しいものほど、手に入らない。



「もしもし?」

 相手はいつものあの人で、今日は向こう誘いの電話。

「空いてるけど」

 答えの後には案の定。いいよの一言で電話を切った。

「聖? どうかした?」

 気配りの多いこの先輩、今のコイビト、一つ上。少し高い身長と、そこそこ凛々しい顔してる。

「ううん、どうもしないけど」

 にこりと笑って電話をしまう。今度のお誘い、水曜日。

 慣れたことで、いつものこと。

「誰?」

「んー、悪友…みたいなもの」

 詮索好きは誰だって。踏み込まれるのは好きじゃない。

 そろそろ切り替え時かもね。

 欲しいものほど、手に入らない。



 気を使うのは好きじゃない。けれどもつかわざるをえない。

 俺に群がる女の子、それはみんな偽者好きで。

 オプションめがけて突っ走る。

 ごめんと一言謝って、人をふるのももう慣れた。

 いつものことと割り切って、一発平手を我慢する。

 すまなさそうな装いで、も一度ごめんと謝れば、謝るなと言い去っていく。

 これでおしまい、いつもと一緒。

 一つ一つに慣れきって。

 だんだん冷たいヤツになる。

 一つ一つが曖昧で。

 だんだん鈍くなるのだろうか。

 毎度のことと思ってしまう、どんどん冷めたヤツになる。

 手に入らないものは、遠すぎて。

 それでも諦めきれないで。


 いつもの場所、いつもの時間。

 こっそり彼女がやってきた。

 今日は水曜、仕事も全部休みの日。

 気を抜きそのまま、過ごせる日。

「や、」

 やぁの半分、片手を上げて、出会いの挨拶、曖昧で。

 駅の裏の裏道通った、入り組んだ先の小さな一室。

 いつも会ってるいつもの部屋。

「またふったの」

 質問というより確信なのは、頬がすこぉし腫れているからか。

「今回はまた、いつも以上に続かなかったね」

「まぁ、また適当に探すさ」

 苦笑を漏らした言葉に同じ、苦笑を漏らして返答返す。

 おんなじものを欲しがって。

 おんなじものを探してる。


 コイビトじゃない。

 友達じゃない。


 そんな微妙な関係の二人。

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