Section.10
見知らぬ部屋の中、僕と彼女は向かい合って立っている。その間の距離は十五センチメートルほど。そして、彼女は刃渡り約七センチメートルのナイフを構えている。
つまり、僕達の間の距離は、正確には八センチメートル程度といえるだろうか。
いや、柄の長さも考慮すればもっと狭い。そして、万が一、彼女がナイフを押し進める気になれば、僕達の距離は限りなくゼロに近づくだろう。結果、僕が味わう羽目になる激痛については想像すらしたくない。
以上が、僕達の置かれた物騒な状況になる。更に、ここにはある大きな問題があった。
何故、こんなことになっているのか。僕にはどうしてもわからないのだ。
「―――これは単純なゲームです」
急に、彼女が言った。僕は彼女と向かい合う。
僕達の間の距離は、まだ十五センチメートルほど空いている。
END
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