第17話 魚さん太郎

土砂降り雨の中、僕は運転席に乗り込み、帰途についた。

後部座席では魚さん太郎が口をパクパクさせている。

制限速度30kmの道に差し掛かると、なにかが道路の上で跳ねているのに気が付いた。

「ねえ魚さん太郎。あれはなんだろう?」

魚さん太郎は相変わらず口をパクパクさせている。

目を凝らして地面を見ると、それは大量のエビだった。

「うわあ!なんだよこれここはインドネシアかどこかですか?」

僕は混乱して丁寧語を使った。

「うるせーよそんなことより海水くれよハゲが!」

魚さん太郎はいきなりキレた。僕はハゲていないのに。

土砂降り雨の中、僕と魚さん太郎を乗せた車はシーサイドウェイをとろとろと走る。

エビをひき殺しながら。

僕は暫くはエビバーガーやエビグラタンは食べたくないなと思った。

魚さん太郎はえら呼吸が出来ずに死んだ。

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