第37話 男の子ふたり
ヨハネは食い
大きな影がヨハネを覆った。
「おまえ、何やってんだ?」
金髪の男の子が声を掛けた。ペテロだった。
「魚を取ろうとしてるんだ」
「どうやって?」
「手で掴むんだよ」
ペテロは目を強く閉じて、眉間に皺を寄せた。
「魚を取ろうとしているんだよな?」
「そうだよ。そう言ってるじゃないか」
ペテロは二、三歩後ろに下がると、空を見上げた。そして高らかに笑った。背の高いペテロが大声で笑うと、空気がびりびりと震え、遠くまで笑い声が響き渡った。ヨハネは自分への
「何がおかしい?」
「おまえさ、手で魚が掴めるわけないだろ。いいから上がって来いよ」
そう言うとペテロは身を屈めて右手を伸ばした。ヨハネは意地になって横を向いていたが、水で下半身が冷えて来ると、右手を伸ばした。
二人の手はしっかりと繋がれ、ペテロの大きな体は、強い力でヨハネの体を岸上まで引き上げた。ヨハネは自分の体を軽々と引き上げるペテロの力に驚いた。ヨハネは腰まで水でずぶ濡れだった。
「おまえ、服を濡らしちゃってかあちゃんに怒られるぞ」
ペテロは笑顔で言った。
「あのピーノの木の下まで来いよ。釣りを教えてやる」
ヨハネはペテロが左手に長い釣り竿を持っているのに気が付いた。それには釣り糸が巻かれその先には黒く光る釣り針が光っていた。ペテロはピーノの木の下に生える草むらを踏み固めると、そこに
「ヨハネも隣に座れ」
ヨハネは素直に従った。濡れた
「魚は手掴みじゃ取れないよ。魚を取りたかったら、網で漁をするか、釣りをするか、
「どうすればいいの。ぼくは網も釣り道具も
上半身裸のヨハネは口を尖らせた。
「網の漁は大きな網を作らなきゃいけないし、
「なら、釣りはどうすればいいの?」
「釣り竿を作るんだよ。バンブーの
ペテロは自分の釣り竿をヨハネに渡した。ヨハネは、初めて見る釣竿を、恐る恐る受け取った。
「そんなに怖がるなよ。そんなの簡単に作れる。俺の材料を貸してやってもいいぜ」
「ほんと!」
「俺に付いて来いよ。作り方を教えてやる」
「うん!」
ヨハネは
ペテロは川の近くにあるバンブーの茂みの近くまでくるとヨハネのほうを振り返った。
「ここがバンブーの森だ。これの若木が竿にピッタリなんだ」
そう言うとペテロは腰の帯に付けていた小刀で一本の若木を素早く切り落とし、枝を払った。そしてヨハネに渡した。
「もらっていいの?」
「いいさ。その代りおまえは俺の子分だぞ」
「うん!」
「次は糸と針だ。いい所に連れていってやる」
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