第22話 セプールベタの説教
その光景を眺めながら一人の男が解体跡の土台の上に立った。その男は赤ら顔で顔の下半分を鼻ひげと口ひげで覆っていた。一人の人足が「セプールベダ様だ」とつぶいた。その司祭はよく通る声でゆっくりと話し始めた。
「みな聴くが良い。天地万物の創造主は、みなの奉仕を
そこまで話すと、その司祭は唇を舐め、声を整えて朗々と説教を始めた。
「この島が、何十年も前に見い出され、大天使ミカエルに捧げられる以前、ワクワクたちが建てた偶像崇拝の館が数えきれないほど立ち並んでいた。そこでは樹木を切り出し作った粗末な門と、苔むす石畳の回廊が続いた先に、様々な偶像が崇められ、
その司祭は話し終わると恍惚とした様子で石段を下りた。
人足たちは黒パンをくわえながら、その様子を呆然と眺めていた。
その中にあって、ヨハネは心穏やかではなかった。彼は司祭の説教に強い違和感を覚えだからだ。彼の故郷にもこのような異教徒の神殿は数多くあったが、あの説教のように邪悪で陰惨な場所では決してなかったからだ。ワクワクの神殿は静寂で清潔で、心を穏やかにしてくれる場所だった。高台や丘の上に造られたそれらの神殿は、ワクワクの若い男女が婚姻の儀式を行う美しい場所だと彼は知っていた。今ではみな教会での結婚式に代わってしまったが、ヨハネは幼い頃に見たワクワクの契りの儀式をよく覚えていた。それは、白と赤の衣装に身を包んだ男女が神殿で静かに祝福を受ける穏やかな儀式だった。
ふとヨハネはティーを想った。
そして馬車に近づき黒パンを一つ取ると服の下にねじ込んで隠した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます