10月29日

 この前のことです。


「…先輩」

「なんやねん加納?」(設計書を見ながら)

「先輩は課長に「先生」つけられて呼ばれた事あります?」

「ああ、あるで。新人の頃にな。あれあの人のクセやねん。気にせんでええ」

「はあ……そうなんですか」

「なんだ、呼ばれたん?」

「ええ、しょっちゅう」

「うわあ、おまえそれ「ダメな子」認定されとるんやで」

「じゃあ先輩も「ダメな子」認定されてたわけですか?」

「うっさいわヅラ!」

「すいません。それじゃああのですね……」

「なんじゃ?」

「「大先生」って呼ばれた事ありますか?(´д`)」

「……呼ばれたのか?」

「ええ、今月に入ってから」

「いつ?」

「えっと、ミルキー舐めてたら」

「……そんで?」

「『加納大先生。ミルキーは美味しいかい?』って――」

「そんだけか?」

「ええ」

「……おまえもうクビかもなあ。」

「マジスカ!? なんで!?」

「それかまた本社へ呼び戻されるかもしれへんな。古賀のほうが仕事できるからな」

「ご、ごめんなさい! 真面目に仕事しますからどうか本社だけは!」

「俺に謝ってどうするちゅうねん。しかし「大先生」は初めて聞いたで。なんか意味あるんちゃう?」

「隠語ですか!?」

「そうかもなあ」

「日本語は難しいなあ」

「まあ身に覚えがないか、胸に手を当ててよーく考えてみ」

「はあ、わかりました」




 午後。



「加納大先生――」

「うわあ……」(振り返りながら)

「なんだよ「うわあ」って」

「いえ、別に……なんか用でしょうか?」

「あのさ、おまえ俺の机の中にミルキー入れなかった?」

「はあ、さっき買ってきたので」

「なんで?」

「いやなんかミルキー食べたかったのかなって思って」

「いらないよ!」

「だってさっき食べたそうにしてたから――」

「あれはおまえが職場でミルキー食い過ぎだからさりげなく注意しただけだ」

「食いすぎ? そうですかねえ?」

「そうだよ! あと古賀も食い過ぎな。お前ら少し自粛しろ。仕事だぞ」

「はあすいません……」




 俺と古賀くんで一日三袋も食べています。

 深夜残業がきつい……おなか太るわー。

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