9月20日

 出向先の職場は計9人で仕事をしているのですが、課長、係長の他に課長代理の方がいるのです。

 名を藤谷ふじやさんといいます。

 藤谷さんはとっても硬派な方です。見た目がとても渋いです。

 ポケットに手を入れているとチンピ――いえとても渋い方です。

 落ち着いた声で話します。小さくてもよく聞こえる声です。

 でも割と寡黙な雰囲気を出していて、見た感じもちょっと怖いので結構話しかけづらく、今まであまり話す機会がありませんでした。

 その藤谷さんが喫煙所で俺に話しかけてきました。


「加納……」

「あっ、藤谷さんおはようございます」

「おう……」


 藤谷さんはそう言ってジッポーライターをカチンと鳴らし、タバコに火をつけて吹かしました。

 うわー渋い。藤谷さん渋い。かっこいいなあ。男って感じがします。


 足元はサンダルを履いていますが。


 そして、目を細めて窓にかかった日よけに指をかけたのです。


「加納」

「あ、はい……」

「こうやってると、「太陽に吼えろ」のボスみたいだろう?」

「は?」

「……渡哲也みたいじゃねえか?」

「はあ……今、朝ですけど」

「うるせえいいんだよ」


 藤谷さん突然何言い出すんでしょう。

 まあしかし、それなりに様になってるし、とりあえず感想を述べなくては。待ってるし。


「はあ、似合いますね。渡哲也みたいですよ」

「だろ?……髭を伸ばしたんだよ。」

「……いや藤谷さん文脈繋がってないですよ」

「うるせえいいんだよ」


 藤谷さん本当にどうしたんでしょう。

 さっきから強引過ぎる。


「……だって渡哲也は髭伸ばしてなかった気が」

「……伸ばしてた時もあるんだ。」

「そうですか。でもそれじゃあれですよ、中尾彬みたいですよ」

「なに?」(ギロ)

「いえ、なんでも」

「まあそうかもな、最近髭に白髪も出てきたしな……フフフ」

「エヘヘ」

「アハハハハ面白いだろ?」

「はあ、面白いッスね」

「面白くねえよ!」

「!?」




 藤谷さんは意外とひねくれ者という事が判明。

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