9月8日
うちは卑しい家族です。
今日は夕食にピザを頼んだのですが、4人に対しピザは13キレでした。(真ん中の弟は留守)
そんなわけで1人3枚ずつ食べて一枚あまったのです。
てかピザ屋さんなんで奇数に切るのか。
案の定奪い合いになりました。
ここで普通の親なら率先して息子に譲るものです。
でもうちは違う。
むしろ親の方がビールのつまみに食べたくてしょうがないように見えました。
末弟も部活帰りだそうで、きっと3キレくらいじゃ足りないほど腹が減っていたに違いありません。
まさに一触即発の険悪なムード。バカかと。
仕方ないので俺は譲りました。うわー俺なんて大人。
で、残るは父、母、末弟となったのですが、やはり3人とも一歩も譲らない。
ここで、末弟から建設的な意見が出ました。
クイズで決めようと。
恐らく末弟は危機を感じていたのでしょう。
これ以上時間を延ばせば父が必殺技を使うに違いないと。
父の必殺技、それは――
『お前等を今まで育ててやったのは誰だ! この家は誰の家だ!』
――です。
コレが出たら母は哀れみの目で父を見て、息子達は何も言えなくなります。
彼はきっとその前に決着をつけたかったのです。
果たして末弟の意見が通り、ピザ一枚のために3人でクイズ対決をする事になりました。
「よしヅラ、おまえがクイズ出せ」
「ええっ!? 俺!? いやいいよ。じゃんけんで決めたほうが早いじゃん。あと兄に向ってヅラいうな、ヅラじゃない」
「うるさい! お前はそうやっていつも善人ぶりやがって! この偽善者が!」
「……酷い。わかったよ、じゃあしょーがないなー」
なんだか面白そうだったのでクイズの出題者をやってやることにしました。
俺ってなんて優しい。それじゃあれですよ! 張り切ってまいりましょう!
「えー、それでは問題を――」
ピンポーン
「……父さん、一応問題を出してから――」
「禎丞、俺は思うのだが」
「なんですか?」
「うん、やはりここは一家の長である俺がだな、ピザを食うべきだと思うのだが」
来た! 早速来ました父の必殺技が!
もうクイズで決めると一度決定した以上、今更変更はできません。
それが加納家のルールなのです。
末弟流石するどい読み! 素早い対処! いやー危ない。まさに一歩違いでした。
「ダメ、そんな横暴をするから、息子から老後の面倒を見てやんないとか言われるんだ」
「なにを!? そもそもな、このピザは俺が金を出して――」
「どうでもいいから早くはじめろオラァ!」
「母さんしかしだな――」
「それでは問題です」(何事もなかったかのように)
「バッチコイ!」
「ピザと10回言ってください」
「うわあ」(今更感漂う溜息)
「言わなかった人は失格です。はい開始」
「「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」」
「ではここは?」(肘をさしながら)
ピンポーン
「はい、母さん!」
「足!」
「……いや、意味わかんないよ」
ピンポーン
「ひじ!」
「末弟正解!」
「しまった肘か!」
……父さんそれマジですか?
「よし、俺のモンだ! 俺のピザだ!」
「おめでとう」
「父さん文句言うなよ?」
「うーむ、仕方ない」
というわけで、見事末弟が知略を活かし、ピザをゲットしたのです。
どうでもいいけどピザはすでに冷めててまずそうでした。
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