8月22日

 出向先勤務になってはや2週間くらい。

 最近俺は失敗ばっかりしていて、しかも職場で怪しい動きばかりをしているので、先輩方の間ではかなり評価が下がっています。

 しかし職場の先輩方は本当に優しい方々ばかりなのです。課長も係長も頭ごなしに怒るのではなく、優しく笑顔で諭すように注意してくれるのですよ。

 それがかえって辛い時もあります。忙しいのに悪い事してしまったなあとホント申し訳ない気持ちになります。

 これはやばい! もっとしゃきっとして汚名返上しなくては! 早く仕事に慣れて先輩達をサポートしなくては!

 初心忘れるべからず! と、今日は気合を入れて出社したのです。


 そしたら早速課長に呼ばれました。


「加納先生。ちょっと来て」

「先生て!?」


 うわーやな予感。

 しかし上司が呼んでいるのですから参上しなくてはいけません。

 急いで課長の下へ向かいました。


「なんスか課長?」

「加納先生。昨日提出した週報ちゃんと見直ししましたか?」

「えっ!?」


 やばい。また誤字脱字とか多かったかな。

 これはまずい。思いあたる節がありません。


「どうですか? 見直しましたか?」

「ええと、多分見直しました」

「日本語おかしいよ! 多分て!」

「どっか間違いありました?」

「先週分の上司のコメントが消えてなかったよ。フォーマットに上書きする場合は気をつけてやらなきゃ」

「す、すいません」

「気をつけるようにね」


 ああ、また笑顔で諭すように言ってくれてる。

 こんな初歩的なミスをしてしまったのに、まだこのへたれにチャンスをくれますか。

 本当申し訳ないのです。次こそは! 絶対!


「しかしね加納。疲れてるのかなんなのかわからないが最近ミス多いよ」

「はいすいません」

「ほんとね――」


 そこまで言って課長はきょろきょろと辺りを見回してから、手元にあったノートの裏にすらすらと書いたのです。



 たるんでないか? 気を引き締めてやらなきゃだめだよ?――と。



 今思えばあれは俺に気を使って声に出さなかったのでしょう。なんて優しい課長なんだろうなあ。本当申し訳ない。

 でもその時俺はそこまで頭が回らなかったのです。


「あ!?」

「どう? 加納先生」

「課長。読めますよ! 今日の字キレイッスね!」





 また口が滑った。

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