ハラキリ南半球(抜粋)

ヅラじゃありません

1年目

4月7日

 夜帰宅したら、なんか家の前の道にバナナの皮が捨てられてたんですが。

 あからさまに『滑ってください』といいたげに無造作に置いてあるバナナの皮ですが、一体誰がこんなところに?

 もしや……俺に転べという天の啓示――

 しかしここで『うわあっ!』とかわざとらしく滑っても見てるの猫くらいしかいないですし、すべり損な気がするのですがいかがかしら。

 とはいえ、ご近所は老人が多いので誤って踏んで怪我したら大変です。

 ここは片付けておいた方がいいかと思ったのですが、まあでもこれだけ目立ってればみんな避けて通るだろう。ていうかぬちゃぬちゃしてそうで拾いたくない、とへたれな俺はそれを無視して帰ったのでした。


 そして三十分後。

 父が帰ってきました。


「ただいまー母さん湿布ある?」

「うおい、父さんどうした?」

「バナナの皮で滑って足捻挫したみたい。」

「バナナ?……そんなバナナ」

「全く誰だあんな所に捨てた奴はっ!」


 父さん、母さんのダジャレは無視ですか?

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