love&novelーもう一人の大事な人

天使 薫歩(あまつか かおう)

第1話

学校とは、私坂上 花恋にとって監獄よりも辛い。

英語になれば好きなものとペアを組み、ひとり私があぶれると男子が私に声をかけてくる。

私がそれを断ると女子から冷たい目で見られる……私にどうしろと?

トドメには美術の時間モデルとなりクラスメイトと前に立たなくてはいけない。

一部から「坂内さんって絵になるよねー」

とまで聞こえて来る

……ひどい絵を書いて絵にして笑うとそういう事ですか……

そんな私にもほかの人より優れたものはある。

女子の会話を覗いてみるとちょうどその話題だった。

「この前出たスタプリの新刊見た?最後めっちゃキュンときたわー」

「まじまじ新刊楽しみだわー」

私は中高生女子の間で知らない人は居ない現役ラノベ作家坂下 安恋。

代表作「星の姫君」通称「スタプリ」星からの使者ラブリと王国の王子タスクの純愛ストーリーは、女子高生の間でブームを巻き起こしている。このことを知る人は家族ぐらいだ。

何よりも現実の私はスクールカーストの最底辺ネクラぼっちだ。

複雑な気持ちになっていると終業のチャイムがなった。

図書室か屋上で執筆をしようとすると隣の席が騒いた。

「スタプリやばいくなぁぃ?」

「まじまじやばい!」

リア充共が私の小説の話をしているのがなんとなく気に食わなかった。

急いで屋上に向かうことにした。

「……」

「なになに相川君どうしたの~?」

「別に」

……あれから何分たっただろうか、雲行きが怪しくなってきた。

「あっ!」

気がついた時には遅かった。

置いておいた原稿が飛ばされたのだ。

(やばいやばいやばいやばい拡散される)

フェンスに引っかかった原稿を拾おうとすると同時に横から手が伸びてきた。

「……!あっ……相川君」

「坂上もこんな趣味あったんだな」

「……とりあえず返してよ」

「届けた人には閲覧権ぐらいあるはずだろ?」

そう言うと彼はペラペラとページをめくり読みはじめた。

「坂上があの坂下 安恋だったのか……名前が似てると思ったんだよな」

……反応が非常に薄い。もっと「えぇぇぇぇ!?」とか「なん…だと…」とか聞きたかった。

「……噂に聞いていたが王子の奴なんか俺にキャラがぶってるな……」

断じて違う!王子はたっ君がモデルなんだから……たっ君何してるのかな……

「……相川君……さすがに自意識過剰だよ……」

「冗談だ」

そう言うと相川は読んでいた原稿を返してくれた。

「それじゃ」

「待って!」

このままではきっと広められてしまう、そんな気がした。

「……このこと誰にも言わないで?」

相川は少し考えると、口元をニヤリとさせてこう言った。

「言わないかわりに週末俺とデートしてよ」

「ありがと……え?……デッ……デート!?」



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