※注意:この楽園にはオオカミさんがいます
けん月二三
楽園の手前にて
ああ、母よ。私はあなたを恨みます。どうしてこのような身で私をお産みになられたのか。
女の身にして180という背丈とそれに見合う細く長き足、豊かなる胸を授けられ、男共の好奇なる視線を受ける苦しみをあなたは知らない。
目眉は長く整い、恨めしき男共より凜々しく精悍なるこの容貌に向けられた無垢な乙女たちの眼差しに答えられない腹立たしさをあなたが知ることはない。
私がかつて、英語のノート最終ページより一つ前に綴った詩である。
共学高校への進学というレールしか用意されていないことに絶望した私が恨み辛みに任せ書き殴った詩であり、負の遺産である。
だが私はこの詩と、その頃の私におさらばするのである。
その1ページを破り取り、4つにも8つにも裂き、不要品を詰めたゴミ袋へと放る。
母よ。やはりあなたを恨みます。50を超える妙齢にふさわしくシワとシミばかりの手ではあっても、叔母上、あなたの手は私にとって祝福の女神が差し伸べてくださった御手が如きであった。その存在を私の目から遠ざけ、隠してきたあなたは罪深い。
だが私は、ドブの縁に溜まったヘドロのような10年間を返せとは言わない。
これからの10年、いや息絶えるまでの人生をこの楽園で手に入れるのだから。
さあ踏み出そう。
ユリイカ、当て字とはいえ良い響きだ。その通り、私はやっと見つけたのだ。
この楽園を。
※注意:この楽園にはオオカミさんがいます けん月二三 @kenduki22
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