early・late・memories
@Umica0
第一章 少年と少女が出会ったら
第1話 プロローグ
穏やかな寝息が聞こえる。
ぴこん、ぴこんという規則正しい機械音。
「和斗さん、聞こえてる?」
「はいはい」
「今から二人送るからね。えーと、イーストサイドかな?」
「え、今何人っつった?」
「二人だけど」
「二人!?なんで」
「ふふ、聞いてよぉー、男の子のほうが、女の子のほうにさぁ、『一人で行くな!俺も一緒に行く!』だとさぁ。なんか青春って感じぃ?」
≪彼女≫が情感たっぷりに台詞を読み上げると、≪彼≫のため息が画面を通じて聞こえる。
「そんなこと言って、お前も羨ましいんだろう?」
「まあ、ね・・・って、そんなことはどうでもいいのよ!ええと、じゃあフィールとフレイアね、よろしく!」
「了解。じゃあ頼むぞ」
「おっけー!」
≪彼女≫のなんだか楽しそうないらえが、静かな部屋にやけに響いた。
≪彼女≫は静かに吐息を漏らすと、様々な画面をタップする。
もう慣れてしまったこの動作に、少しだけ嫌悪を感じる。
ピッ、ピッ、ピッ・・・
まばゆくスパークする光のまぶしさ。
嫌いだ。
でも、これが≪彼女≫の仕事。
仕事の内容自体は、嫌いではない。
苦しんでいる人を救う・・・ただそれだけのこと。
「もう一度の人生をごゆっくり」
最後に必ずかけている定期句を口にしてから、 ≪彼女≫は、ゆっくりと部屋を出た。
1・・・2・・・3。
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