アズマのショウ

a.p

第1章 森の時空屋

「どうして!どうして誰も見つけてくれないのっ……!」


“ダレカ…ワタシヲミツケテ……”


居場所を失った少女は、ここから逃げたいと願い、走り続けて…木漏れ日のシャワーが降り注ぐ、幻想的な森の奥へと迷いこんだ……

そこに姿を現したのは…小さな“時空屋”という、変な看板を出した、古い店……


────────────────────


「あれ…ここは……」

辺りを見回して、やっと、自分の知らないところに来てしまったことを理解し、引き返そうとすると

「いらっしゃいませ。お客様?」

不意に後ろから声がした。振り向くと、ニヤリと笑う背の低い、男とも女ともつかない、中性的な顔立ち、声の、恐らく外観からして子供だろうと思しき人物がソコに立っていた。

「あの…僕?誰かな?ここが何処かわかる?」

子供の目線に合わせるため、しゃがんで問うと、

「僕は時和トキワメグル。ソコの時空屋の副店主をやっております…宜しくお願いしますね…?お客様……」

近くにある“時空屋”を指差し、思いがけずしっかりとした口調で答え、余裕をかもし出す笑みに、副店主という言葉。加えて、“僕は子供ではないですよ。お客様…これでも二万年は生きました”と、意味のわからない発言。

「じゃあ…」

私の問いを掻き消すように

「お客様、立ち話もなんですので、店の中に…どうぞ、御遠慮なさらず…」

ゆるりとした口調だが、他人の意見を通さない、凛とした声で遮られ“時空屋”という、訳の分からない小さな店の中に招き入れられた…と、同時に

「巡。何をしていた……」

良く通る、低いながら綺麗な声、人より、かけ離れてカッコいいといったわけでも、目立った所がある訳でもないが、目を引く、見つめずには要られない存在感で、その人は、本を片手に本棚に凭れ掛かり立っていた。

「嫌だなぁショウ…僕はお客様連れてきただけだよ~?」

バカにしたように“メグル”が“ショウ”に言うと

「黙れ巡……ん?…客……?ああ、すまなかった…掛けてくれ」

やっと私に気付いて、意外そうな顔をし、私に椅子に座るよう促す“ショウ”と呼ばれた目を引く青年(多分私より歳上)が言い、私は椅子に腰掛けた。 座ってから気付いたのだが、この店は古く見えるのに、決して汚くは無く、少し開いた窓から射し込んで来る木漏れ日が、別荘のような美しさ、綺麗ささえも感じさせる。

「俺は、東雲シノノメショウ。ここ、時空屋の店主だ。こっちのチビは…もう紹介されたか…」

「もっちろんしたよ~!お客様の御名前は?」

「私は月城ツキシロ ミオです。それよりここは…」

何を売っているお店なんですか…という私の言葉を待たずに

「やはり名簿には無い……なら聞く。月城澪。お前はどうやってここに来た?」

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