スイート&スイート

永久 夏波

学園長はバンドマン

朝、横浜の『港の見える丘公園』前に水色のブレザーに白いスカートの女性がズラリと並ぶ。

「瑠璃さん貴方はどうどうとあの素敵な花道を通るべきお人なのになんでこんなとこにかくれていらっしゃるの。」

私の親衛隊のカスミのお怒りの声で数人振り向く。

ヤバイ、ばれないように制服に正装に中等部は被るベレー帽かぶってるのに。

「カスミ、お前さわぐな。瑠璃、逃げるな。」

逃げようとした私の腕をチビの赤い髪の少女がガシッとつかむ。

幼馴染みのチカだ。

キャーと声援があがるどうやらこの騒ぎの主がきたようだ。

「おはようございます昴さま。」

金髪のグラサンで笑顔を見せるのは『ドロフィーヌ学園』の学園長、星砂昴。

学園長と乳兄弟に育てられた私も星砂ブラザーズの一員とみなされているらしい。

でも新しく開校される横浜校の人達の大半は知らないはず。

このまるでパレードみるような騒ぎは『港の見える丘公園』の展望台でこれから開校式があるから。

ただでさえ五月の暑くなりはじめた太陽がまぶしいのにさらに中等部は白のマリン帽、さらにあつい………。

ちなみに高等部は小皿帽子にイルカ柄のベール、お姉様方は花を投げる係いがいは公園内に集中しているらしい。

お出迎いが終わると小皿帽子は学園のほうに流れはじめる。

開校式に一部と二部があって一部はまだお試しの幼、小それから中等部のみなのだ。

ちなみに二部の高等部と中等部一部が参加のほうは立食パーティー式なんだとかきいたけど。

わけられた理由、ここの学園長は………

「みんな道路には飛び出ないでね。小さい子に前ゆずってあげよう。」

マイクを持つ学園長の後ろには真白なピアノ………

「じゃあ始めるよ。」

私はフランス山の方から大入り満員の展望台を見上げる。

カスミはいない、うまくまいたようだ。

ちっチカそこは危ないでしょ、チカは展望台よりの森の木に寄りかかっているのだ。

しかもいつだしたのか小型の通信マイクを胸つけて。

完全にボディーガード………チビだけど。

おっとそれは置いといて学園長はなんとバンドマンなのだ、しかもこの横浜市で有名な………だから公園の外まで人がでないようにという配慮で一部、二部で分けたらしい。

「まだ、本格的には出来ないんだけど、僕は保育や幼稚園を設けて子供たちの未来を救いたいと思ってるそんな気持ちを込めて園歌を作りました。 今はまだ正式じゃないから曲名はイルカで。」

イルカのバルーン出てきた………

………波間を跳ねるむなびれに小さなイルカがしがみつく

怖くないよと母さんが言う

子供は波に身をまかせる

波のウェーブが歓迎するよ

小さな小さな体をゆすって………

波にウェーブキラキラ舞よ新しく広がる未知に向かって。

可愛らしいピアノの音がやみ拍手がおこる。

「これからだけど、親御さんも小さなみんなもよろしくな!」

その後は普通に市長あいさつとか入った。

途中でこっちのフランス山のほうまで冷たいペットボトルのお茶がきた。

「みんな暑いしボーとしちゃうよね。祝辞の前に一曲歌うからみんなしんぼうして。奥多摩だったころはなかったから校歌を作ったよ。」

エッ!?いつセットしたのかドラムが用意されてるし。

「一部のゲスト、ギター蔵元晋作!ベース、リョウマ!」

エーこの閑静な山手でいつもの暴れ王子やるの?

「エー!リョウニイ、ベース引けるのかよ。」

チカがよくみようと階段じゃなくて山すそ登っていった。

青い空に風かける

空のしたの海から夢は生れる

夢の翼を持ち

この地で飛び立て

カモメになれ

『ドロフィーヌ学園』で学もの

………

暴れ王子にしては静かだったけど後でクレーム言われて頭かかえる乳兄弟の愚痴がきこえるきがする。

なんか、新学期そうそうから疲れる。

昼の部だけでくたびれたのに星砂家の横浜のお屋敷に帰ったしゅんかん。

「瑠璃姫様、お帰りになられました。」

エッなんでカスミおよび親衛隊の衣装係までそろってるの?

「お帰りに瑠璃ちゃん。ハイハイわかったからメガネザル。」

空気をやぶる場違いな声はこの星砂邸の持ち主、アゲハさん。

抵抗するひまもなくバスルームに入れられ裸の世話までしないでとせっとくし、湯船の中でやっと一人になれた。

このパターンて………二部に出ろということよね。

ウワーいやだなあ田舎とちがうんだから………。


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