オワコン学校に入学したら青春がないってマジですか?

@megusukesoft

第0話 オワコン学校へようこそ!!

まだ幼くて、何も知らかった自分。

正しさの意味も知らずに突き進んで、大きな壁にぶち当たって。

傍から見たらバカだなこいつって思われてるだろう。

でもそんなのどうでもいい、構わない。

だってさ、それが過去の俺が信じた道なんだから。

俺はこれからも大きな壁に幾度となくぶち当たるだろう。

でも、それでいいんだ。

何しろそれが、俺が信じた「未来の自分」に誇れる道なんだから――


第0話 オワコン教室にようこそ!!


入学式――

それは、満開の桜に彩られた「大きく綺麗でどこか大人びた」校舎の前で、新入生たちがこれからの自分を想像し胸を躍らせる日だ。

いや、そうでなくてはならない。

むしろそうあるべきなのだ。

……そうであってください。

段々自身が無くなってきた俺こと東条 俊は、そんな一抹の願いを込めて瞼を開けた。

「……むごいな」

誠におかしな話だ。目の前にそびえたつ校舎を見て、言葉がそれしか浮かんでこない。

いまどき流行らない木造建築に、ヒビどころかそれはもう清々しくばっこりと割れているガラス。

そして極めつけには校舎の至る所に改修工事の跡が残っている。

「……」

その悲惨な光景を前に、とりあえず俺は目を閉じてみることにした。

落ち着け、とりあえず状況を整理しよう。

Q. 今日は何日?

A. 4月7日 入学式の日

Q. 今自分がいる場所は?

A. これから通う事になっている高校の校舎の前


そうだ。今日は入学式、そして俺はこれから通う校舎の前にいるんだ。

となれば瞼を開けた時、目の前に映っているのは綺麗で大きな校舎以外ありえない。

さっきの一抹の願いは踏みにじられたが今度は絶対に大丈夫だ。

なにしろ俺は新入生なのだから!!

俺は勝利を確信し、ぐっと拳を強く握りしめて瞼をゆっくりと開けた――……。

「……むごいな」

「誠におかしな話だ。新入生の前にそびえ立つ校舎を見て、新入生はそれしか言葉がみつから――って痛ってぇ!!」

ラノベ風に現在の状況を説明していると、後ろから誰かに思い切り頭を叩かれた。

「おい俊、お前の世界ループしてんぞ」

とりあえず落ち着いて考えよう。俺は現在新入生で今日は入学式。そして俺は今誰かに強くたたかれた……。

俺の人生観から推測するにつまりこれは――……

「――美少女との出会いイベントだっ!!」

「んなわけあるかっ!!」

バシコーン!!っと漫画で表現されそうなくらいの勢いで俺は再び頭を叩かれる。

ほう、女の子にしては暴力的だな……。

こんな女子がヒロインなら俺の体がいくつあっても足りないじゃないか……。

……まぁ、可愛ければオールオッケーなんだが。

どれ、実際のところどれだけの美少女なのかこの俺が審査してやろう。

そんな「イケメンなのにモテない幼馴染」みたいなことを考えながら、俺は強くたたいてきたツンデレ美少女(仮)の向いた。

「……はぁ?」

……俺の目はどこかおかしくなってしまったのだろうか。

綺麗なはずの校舎がやけにぼろく見えるし、金髪ツンデレ系王道美少女のはずが冴えない赤髪筋肉質のお兄さんに見える。

「そうかこれは夢だ。つまりこうして目を閉じ頬をつねれば現実世界に――」

「――ってぇな!戻れるかここが現実だ!!あとせめて自分の頬をつねれよなんで俺の頬なんだよ!!」

「いやぁごめん。美少女に頭を叩かれたのならまだしも、こんな冴えないお兄さんに叩かれたのだと思うと無性に腹が立ってね。久しぶり、晃」

「おう。卒業式ぶりだな、俊」

「説明しよう。今俺の前にいる冴えないお兄さんは昔からの友達だ。やっかいなことに幼い時から短気で今みたいに些細なことでよく切れてくるから気を付けた方がいい」

「冴えない押しすぎだろ!それに俺は短気じゃねーよつねられたら誰でも切れるだろうが!あとディスるんならわざわざ言葉に出すな!!」

「なに言ってるんだよ晃。口に出さないとそうやってつっこんでくれないだろ?口に、出さないとさ」

「――地味に人の間違いに突っかかるんじゃねぇ!!」

「まぁまぁ。もうそこらへんにしときなよ晃。今の晃、読者からしたらただのうるさい犬にしか見えないよ?」

「誰のせいだ誰の!!……ってまぁでもそうだな。こんなとこで言い合ってても時間の無駄だ」

「ああ。それにさっきからセリフばっかだからね。これではラノベじゃなくゲームだと読者に突っ込まれてしまうよ」

晃(――お前は何と戦ってるんだ!!なんて絶対につっこまないからな……)

と、晃は唇を噛みしめ開きそうになる口を必死に噛みしめる。

その下唇から流れる赤い鮮血はまごうことなき彼の決意の固さの表れだろう。

「……おい、いい加減にしろよ」

「ちょうどいいじゃないか。やっとセリフ以外の文が入ったんだし」

「そういう問題じゃねぇ!!」

なんだ、結局突っ込むんじゃないか。

あ、BL愛好家同人作家の為にわざわざいかがわしい漢字変換にしたわけじゃないからね……?

「さて、ふざけた茶番はこれくらいにしよう。このままじゃ0話がただのギャグで終わってしまう」

「……全部お前のせいだけどな」

晃は眉間にしわを寄せ、怒りを露骨に示す。

やはり彼は短気だ、間違いない。

「……」

何かを訴えかけるようにこちらを睨みつける晃をよそに、俺は再び目の前にある怪奇現象、すなわちボロボロな校舎に目を向ける。

改めて見ると本当にボロいな。

さっき見たときは気が付かなかったけれど、屋根の木板が一枚はがれ落とされている。

これじゃあ雨が降った時どうするつもりなのだろうか。

「なぁ晃、この校舎をみて素直にどう思った?」

「どうって……むごい」

「だよなぁ……」

どうやらこの校舎は見たものに「むごい」と思わせる力があるらしい。

女は外見だけじゃないという男がいるが、ならこの建築者は「校舎は外見だけじゃない」とでも言いたいのだろうか。

……ふざけるな、新入生にとっての学校の第一印象をなんだと思っているんだ。

「……なぁ晃、もう一つ質問していいか?」

「なんだよ」

「俺たちの校舎って……もしかしなくてもここじゃないよな?」

「なに言ってんだよ――」

「――っ!!」

まさか……!いや、まさかしなくてもこれは否定の言葉だ!

……そうか、俺はまず前提条件が間違っていたのか!

俺が勝手にここがこれから通う校舎だと勘違いしていただけで、実際のところはここじゃない。

となるとやはり新入生、俺のMY校舎は綺麗で大きな――

「もしかしなくてもここに決まってんだろ」

――はずがなかったか……。

とまぁこんな感じで、俺の高校生活は幕を開けるのだった――




0話 完














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