Chapter1-Ep.2 事の始まり。『終』
場所は、帝都のとある個人経営の喫茶店。客は、1組しかいない。
「とんでもない事を仕出かしてくれたね。全日本プロレタリア共闘委員会の書記局長の久城一獄議員?」
まだ、あどけなさを残した黒髪の青年は、目の前に座る初老のやや太った男に問い掛けた。
「果たして、なんの事ですかな。暁くん。」
久城と呼ばれた太った初老の男は目の前に座るあどけなさを残した青年に切り返す。
「攻撃型揚陸艦1隻、博物館から持って来た様な前世紀の戦車5台、大型ヘリ5機、移動砲台1門、携行ミサイル20門、強化人間30名、対魔法火器で武装した者が約230名。ゆうに1個中隊規模だ。遠足にしては張り切った装備だな?」
「待ちに待った遠足だからな。対魔法火器で武装したのは250名だ。20名は死体すら判別つかなかったからカウントしなかったのだろうが、捜査は的確にしたまえ。命取りになるぞ。」
「ということは認めますか。一般市民や通行人もあまりに規模が大きすぎて事が起きるまで気付かなかった、警察や軍部も動かず我々でさえ事が起きる直前に知らされた。この意味は分かりますね、責任は取ってもらいますよ。」
「構わんよ、ただ幾ら儂らしかいない店とはいえ白昼堂々ましてや繁華街のど真ん中でやりあう気かい?頭は切れると聞いたがまだまだお子様か。」
その時、司狼の横に立っていた長身の男が耳打ちした。そして、
「久城さん、強がりはやめましょう。今、部下から連絡が入りました。1つ、あなたの部下を拘束しました。2つ、この店の周りには人除けの術を張っています。3つ、拘束した中にはあなたの大好きなここのマスターも含まれています。」
久城一獄の顔から笑顔が消えた。
「な、なに…を馬鹿な。おい、笹倉!…白木!…清水!つ、繋がらん…貴様ら!!儂に危害を加えれば二三雲先輩が黙っていないぞ!」
そう言いながら、小型の実弾銃を構えた。
「そうかっかされるな。温厚なおじい様キャラはどうされました。二三雲?あやつは既に君を見捨ててますよ。その事実は、今君が一番よく分かっているんじゃない?」
「おのれ、暁の倅め…とことんなめをって…!!!」
「久城一獄、君にはうちで知っている限りの情報を聞き出そうと思ったがやめた。後学の為に教えてやろう。こんな所で飼い主に見放される様な奴が情報を持ってるとは思えんからな。そして、もう一つ。私は私でありそれ以上でも以下でもない。私の存在に勝手に他の人の功績を混ぜるな。そして、最後に。魔法ってのは夢があってね。何でも出来るんだよ。返り血を浴びずにね人を殺す事だって出来る。柩、後は宜しく。どんな方法でも構わない。ただし、この後はミーティングだから着替えなくて済む様な処理を命じる。」
「イエス・マイロード。」
柩と呼ばれた男が返事をする。そして、続けてこう言った。
「我が名は佐久間柩、武装警察軍少将にして暁総帥が右腕。我が、心臓は既に魔王に預けてきた。久城一獄よ、貴様を国家への反逆の首謀、殺人の教唆、我が主への侮辱!それ正に万死に値する!」
「なんだ貴様は!!!ふざけr…」
最後まで言わなかった。いや、言えなかった。
柩の使った魔法は「ブレイン・ブレイク」と言う、至ってシンプルなものだ。どれくらいシンプルか説明すると脳を爆破するというものだ。今頃、久城の頭の中は文字通りグチャグチャだろう。
「総帥、処理完了しました。本来ならば、打ち首の上都内を引き摺りまわして二見雲の執務室に送り付けてやるべきでしたが、時間がないのと遺族が葬式も開けないのは不憫と思いこのような処理となりました。」
「…柩。妙な執事キャラになるな、公務中でも余程の事で無い限り、いつも通りで構ないよ。」
「左様ですか。若様の仰せのままに。」
「だから…いやもう良い。ミーティングもそろそろ行かねばならん。行くぞ。暁から各位、聞こえますか。撤収だ。繰り返す、撤収だ。死体は、警察に任せておけ。」
「「「イエス・マイロード」」」
斯くして、物語の前譚はおわりもおわり。黒幕は毎度のグレーで潜り抜け、トカゲのしっぽが粛清される。
※「血のクリスマス」
正確には「反体制派による国立第二奇幻魔導高等学院(白虎学園)襲撃事件」
死者は前述のとおり、学園側が死教師10名、生徒7名。防衛有志隊の8割強が命を落とした。重傷者も教師4名、生徒6名(うち3名は防衛有志隊)
序に、襲撃者は神戸港に待機していた揚陸艦があったのだがAPFに制圧された。
なお、死亡した生徒のうち5名は若虎会のメンバーであった。
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