格ゲースキルでVRMMO世界を無双する
神河乱
プロローグ1 「準決勝」
「これは凄いッ! ハヤト選手、バルドワ選手の
――これならなんとか決勝には行けそうだな。
「ボクサー」スタイルだが
――よくこの単調な攻めでここまで上がって来たな。たしかに迫力はあるけど。
胴着に素手の「武道家」スタイルでバルドワの攻撃を紙一重で避けながら機会をうかがう。見上げるような大男が渾身で放つパンチが鼻先をかすめる威圧感は相当なものだが、百戦錬磨のハヤトにとっては見慣れた風景で今さら緊張もない。しかもよく見るとバルドアの息が上がり、少しずつパンチにキレがなくなってきた事が分かる。
――そろそろスタミナ切れかな。じゃあ反撃させてもらいますよ、っと。
ハヤトはタイミングを計り、相手が放ったパンチを避けると同時に掌底で払った。バルドアは突然の反撃に体勢を崩し、慌ててガード姿勢を取る。ハヤトはその隙に一気に距離を縮め、ガードに構わず上からガンガンと殴り始める。
『うおおおおおおお』『反撃キターーーーーー!!!!!!』『行けぇぇぇぇぇぇ』
それをVRライブ中継で見ていた観客たちは一斉に湧き立ち、上空にカラフルな弾幕が飛び交う。小柄なハヤトが2メートルを優に超える大男を一方的に殴りつける様子は
――ほらほら、苦しくなってきたんじゃないの?
ハヤトが最初相手の攻撃をガードせず避ける事に専念していたのは、スタミナを温存するためだ。攻撃を当てられてもガードポジションを取る事で被ダメージ量は90%減にすることが出来るが、かわりにスタミナが徐々に消費される。ハヤトのように全て避ければ問題ないが、ガードで受ければ次第にスタミナが切れてくる。もちろん相手の攻撃を全て避けることが出来るのは、ハヤトの動体視力の良さと操作スキルの高さあってのことで普通はありえない事なのだが。また攻撃も軽攻撃ではほとんどスタミナを使わないが中攻撃、大攻撃とスタミナ消費量は増す。先手を取って押し切るスタイルで中・大攻撃を切れ目なく続けてきたバルドワはすでにスタミナ切れで息が上がっていた。
上段、下段の回し蹴り、ひじ打ち、正拳突き、手刀、掌底と絶え間なく繰り出されるハヤトの連続攻撃にバルドワはガードを下げることが出来ない。その間もさらにジリジリとバルドワのスタミナバーは減り続け、それがとうとうゼロになった瞬間にガードの腕が弾かれてボディーががら空きになった。
――よし、ここだな。
すかさずハヤトは頭の中で複雑な
「おおっ、このタイミングで『旋風脚』が炸裂ッ! 勝負あったか?!」
燃え上がるような輝きを放つハヤトの右脚が、無防備になったバルドワの側頭部に叩きこまれる。目にも止まらぬ速さで放たれる蹴りにこめかみを撃ち抜かれ、バルドワの体力ゲージは一瞬で減っていった。
【YOU WIN!】
バルドワの巨体がゆっくりとマットに沈み、同時に上空にデカデカとハヤトの勝利が表示される。仮想花火が次々と打ちあげられる中、観客たちのメッセージの弾幕が上空に飛び交った。
『ハヤト、すげええええええ!!』『圧勝キタコレ!』『8888888888888888888』
「やはりハヤト選手、強いッ! 攻撃を一発も受けることなくバルドワ選手を沈めました! 第一回RFVR世界選手権、一人目の決勝進出はハヤト選手です! 皆さま、ハヤト選手に盛大な拍手を!」
ハヤトはいかにも渋々といった様子で勝利者インタビューを受け、インタビュアーの要請にこたえて軽く手を挙げた。
――これがなきゃもっといいんだけどなぁ。
「……決勝の相手はやっぱりサラか。順当だな」
試合後のインタビューや取材からなんとか解放され、もう一つの準決勝を見ていたハヤトが呟く。そこでは巫女姿の女性キャラクターが明らかに相手を圧倒していた。舞うように戦うその姿は芸術的とさえ言いたくなる華麗さ。攻撃、防御、フットワークとどれをとっても超一流だ。ハヤトはまだサラとは直接戦った事はないが、トーナメント表を見た時から決勝の相手はサラになるだろうと思っていた。
――サラは100%拳闘士で来るだろうな。
見た目を変えずに
――接戦になるだろうし、体力の削り合いになるだろうから防御重視でいくかな。
準決勝でハヤトは武道家を使っていたが、決勝では片手剣に盾というスタイルの剣士の
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