狐人

@kisaragi_hitoha

第1話


2×××年…世界中での犯罪率が少しずつ増え続け、少年法や精神障害を理由に罰せられない人間が全体の40%以上にのぼる昨今、ある国では“狐人”と名乗る狐の面をつけた正体不明の者が「法で裁かぬなら狐人が裁く………だが狐人は正義ではなく只の独裁者でしかない」という短い映像、世界的な動画サイトに投稿し、それから次々と都市部を中心に法で裁かれぬ者たちを裁いていった結果、他国と比べ犯罪率が減少して行き一部では狐人を賞賛する声も上がっていた…。


――早朝の警視庁


カチャカチャカチャ…


「はぁ…」


1人の男性がパソコンを見てため息を吐く


「どうした諒太?流石に三日間缶詰は辛いか?」


少し風格のある男性が缶コーヒーを成人男性に渡しながら話しかける


藤井「あ、ありがとうございます拓治先輩、まぁ辛いのもあるんですが…実は、ネットに何か情報がないか調べていたんですけど、何も有力な情報はないですし、ネットの一部では狐人が正義だなんて言ってる輩がいまして…」


フジイ リョウタ

『藤井諒太、26歳、警視庁に配属され数年、先輩である間宮拓治を尊敬している。』


間宮「一応この国の犯罪率が他の国より低いのは狐人の行動による結果でもあるからな」


 マミヤ タクジ

『間宮拓治、36歳、一時期は警部で警視入りもするだろうと言われる程優秀だったがとある事件をきっかけに巡査部長に格下げされた』


藤井「確かにそういう見方もありますけど…なんだか納得できません…」


間宮「まぁ犯罪者でもあるし、このまま野放しだと警察の面目が丸つぶれって言う事で俺ら狐人対策課が設置されたんだろ?」


藤井「そうですが…」


プルルルルル…


急に電話が鳴り響く


ガチャ


間宮「はい、こちら狐人対策本部待機班………了解しました」


間宮の顔が少し険しくなる


間宮「はぁ・・・朝から出動か…」


藤井「狐人がまた現れたんですか?」


間宮「ああ、ご丁寧に警察がマークしてた星がな…」


他の待機していた刑事に伝えて慌しく準備をし車に乗り込み現場へ向かう二人


間宮「すぐに周囲を封鎖してるからまだ遠くへは行ってないはずなんだが…」


藤井「けどいつも包囲網をすり抜けるんですよね?」


間宮「そうだ、逃走経路は不明で神出鬼没、いつも狐の面をつけていて、現場には狐人って書いてある紙をばら撒くのが特徴だな」


藤井「はぁ~」


間宮「ああ、それと凶器がバラバラな上に証拠を一つも残していないのもあるな」


藤井「確か…毒殺、斬殺、撲殺、刺殺、焼殺…他にも色々あるんでしたっけ…?」


間宮「遊具での殺人や検査官によると大鎌のような物で惨殺もあったな…」


藤井「それで確か今の所有力なのは複数犯による犯行ですよね…?」


間宮「だが未だに顔所か性別や年齢、体型すらも不明な為断定はできないが…可能性は一番高いな、っともう現場付近に着いたみたいだな」


車から降りて聞き込みをしながら周りを捜索する二人だが…


間宮「また目撃情報すら無いか…」


藤井「ここまで情報がないと探しようもないですね…」


間宮「そうだな……ん?」


ふと立ち止まり通り過ぎた路地裏を気にかける間宮


藤井「どうかしたんですか?」


間宮「さっきの路地裏に人影があったような…」


藤井「酔っ払いとかが寝てるんじゃないですか?日曜の朝7時ぐらいですし」


間宮「それならいいんだが…少し確認して見てみるか」


藤井「まぁ…先輩がそう言うなら…」


路地裏に入る二人


間宮「…っ!」


何かを見つけ顔を顰める間宮


藤井「先輩どうしたんですか?」


間宮「…諒太、至急本部に連絡してくれ・・・二人目の被害者だ」


藤井「って事は・・・?」


間宮「ああ、狐人と書かれた紙が血だまりの上に散らばってる…ほぼ間違いなく狐人だ・・・」


藤井「了解しました」


車にある無線機まで走って戻る藤井


間宮(被害者の身元確認できるものは・・・っと・・・)


被害者の免許書など身元がわかるものがないか調べる間宮


間宮(あった…えっと名前は長瀬陽太19歳…そういえば狐人が狙うであろう人物リストにあったな…確か二年前バイクで引ったくろうとした際、抵抗した被害者をそのまま引きづり被害者は死亡、事件後すぐ捕まったが当時17歳だった為たいした罰を受けず釈放されたんだっけな)


身元がわかり次に死因について調べめる


間宮(さて死因は…って言っても一目瞭然か…心臓を尖った物で一突きそれ以外は特に外傷はなしか………ん?)


遺体を調べていると何かに気付く


間宮(被害者の血痕がビルの上から大量に垂れてる…?)


藤井「先輩!本部へ連絡した所、できるだけすぐに他の方々が来るそうです」


間宮「ああ、わかった…」


藤井「…?拓治先輩、考え事ですか?」


間宮「諒太はこの血痕をどう見る?」


藤井「血痕…?あ、確かに壁に垂れた跡がありますね…あれ?」


壁の血痕を見て違和感を感じる


藤井「被害者は屋上で殺害されて落とされた…にしてもこの血だまりは不自然ですね…」


間宮「そもそも被害者は左胸部以外、外傷らしい外傷がないから落とされた可能性は無いそして被害者の周りに血だまりが出来ているからして被害者はここで殺害されたのは間違いない」


藤井「血だまりも相当な量ですし壁の方にも大量の血痕…明らかに人一人の出血量じゃないですね…」


間宮「もしかしたらこのビルの上に……」


嫌な考えが浮かぶ間宮、藤井も同じ事を思い浮かべ顔を顰める


間宮「…現場から離れるのは好ましくないが…諒太行くぞ」


藤井「…わかりました」


近くの六階建てのビルの屋上へ行く二人


藤井「…三人目ですね」


間宮「ああ、そうだな…」


ビルの屋上に着くと二人の予想は当たり、そこには頸動脈を切られ死に絶えている該者と狐人と書かれた紙が散らばっていた。


間宮「…恐らく壁の血痕はこの該者が首を切られた際に飛び散った血だったんだろうな…かなりの勢いで血が噴き出した形跡もある…」


藤井「………たった数時間でこうも被害者を出してしまってわ…自分ら警察の面目が立ちませんね…」


間宮「そうだな…」


二人は該者の身元を確認しようとする


藤井「身元がわかるような物…というよりかは持ち物自体持っていませんね」


間宮「どこかに荷物を置いて来てたか狐人が処分したか…ん?」


何かに気付く間宮


藤井「どうかしました?」


間宮「いや…手に赤錆びが付着しているな…ここらへんで錆びてそうな物は…」


周りを見渡し錆びた鉄がありそうな所を探す


間宮「…貯水タンク」


藤井「貯水タンクですか?それじゃぁ自分が確認しますね」


間宮「ああ、…俺は該者の身元がわかるものがないかもう一度調べておく」


梯子を登り貯水タンクの裏側を確認する藤井


???「…んあ?」


そこには狐の面を着けた青年らしき人物が座り込んでいた


藤井「っ!?手をあげろ!」ガチャ


とっさに銃を構える


藤井「先輩!狐人らしき人物を見つけました!」


間宮「わかった、すぐそっちに行く!」


慌てて梯子を上り藤井とは反対の方向から青年に銃を構える


青年「あぁ~…!もしかして君達警察?」


青年はだるそうに質問する


間宮「警視庁狐人対策課の間宮拓治だ大人しく手をあげろ」

                

青年「い・や・だ」


挑発的な態度をとりながら立ち上がる


藤井「お前ふざけてんのか?」


間宮「この程度の挑発に乗るな…」


青年の態度にイラつく藤井と冷静に相手との距離を測る間宮

                                  はっこん

白狐「そうそう、この程度で怒ってたら早死にするよ?後お前じゃない狐人の白狐だ」


間宮「…狐人“の”?」


白狐「そうそう狐人“の”白狐」


間宮「後で署で詳しく聞かせてもらおうか…!」


白狐「…?もしかして、もう捕まえた気になってる?」


藤井「こんな場所からどうやって逃げるつもりだ?」


表面上冷静に取り繕うとしている藤井だが、内心イライラしている


白狐「そんな事もわかんないのかぁ~…」


相手に余裕が無いのをわかりながら更に馬鹿にした言い方をする白狐、それに対して怒りをあらわにする藤井


藤井「このっ…!!!」


間宮「おい、諒太!」


怒りで引き金を引こうとするが


藤井「………っ」


しかし途中で引き金を離す


白狐「感情で引き金を引かなかったのはいいが…」


躊躇した隙に藤井の懐に入り込む白狐


藤井「っ!」


間宮「諒太っ!」


白狐「俺達を相手にするつもりなら殺しに来ないと」


隙を突かれた藤井は咄嗟に構えるが、藤井の足を払い体勢を崩したその隙に逃げる白狐


藤井「ま、待てっ!!!」


間宮「止まれっ!」ガチャ


すぐに体勢を立て直し追いかける藤井と銃を向け静止を促す間宮、しかし白狐は柵を乗り越え隣のビルへ飛び移った


白狐「それじゃ、また会う時があったら」


手を振り立ち去ろうとする白狐


藤井「ふざけるなっ!」


間宮「おい!諒太!」


白狐を追いかけようと藤井もビルに飛び移ろうとするが…


藤井「ぁ……」


白狐「っ!」


飛距離が足らずそのまま路地裏へ落下する


藤井「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


間宮「諒太!!!!!!!!」


白狐「バカがっ!!!」


白狐が袖からワイヤーの先端に返しのある槍頭が着いた物を藤井にめがけて投げた


藤井「あがぁっ!?」


藤井の足にワイヤーが巻きつき返しが足に刺さり空中で宙ぶらりんになる


間宮「りょ、諒太!大丈夫か!!?」


藤井「だ、大じょぐっ…いっ痛い…あぐっ…」


自身の体重で返しが食い込み声を荒げる


白狐「痛いのぐらい我慢しろ、命があるだけましだと思えバカ」


少しずつ藤井を地面にまで降ろしていく


藤井「はぁはぁ…うがっ………」


地面に着いてすぐ足に食い込んだ返しを外しその場に蹲る


間宮「おい、諒太?りょうたー!!?」


白狐「さっさと相棒さんの所へ行った方がいいと思うが?」シュルルル


先ほどのワイヤーが袖の中へと戻っていく


間宮「…っ」


間宮は一目散に藤井のもとへ向かった


間宮「おい、諒太っ!」


藤井「た、拓治先輩…」


間宮「とりあえず救急車と―――」


藤井「俺の事は構わずあいつを追ってください!」


間宮の言葉を遮り白狐を追うように進言する藤井


間宮「だが!!」


白狐「…えっと確か諒太と拓治だっけか?」


ビルの上から話しかけてくる白狐


藤井「…何か用か?」


白狐「おいおい、お前が落ちたのは自業自得でそれを助けたのにその態度はないんじゃないか?」


藤井「生憎犯罪者と仲良く話す気はない」


白狐「あっそ…んじゃぁこれは独り言だから無視したきゃ無視すればいい」


藤井「誰がお前の言葉なんか――」


間宮「諒太少し落ちつけ」


藤井「っ……はい…」


白狐「さてさて…諒太とやらは動けないだろうからもしここから南に4km程行った所にある廃工場へ追いかけてくるとしたら拓治とか言う刑事ぐらいかなぁ~?」


わざっとらしく自分の行先を伝える白狐


白狐「あ、けどもしその二人以外の警察がきたら急遽別の場所に行かないといけないなぁ~」


間宮「つまり俺一人でそこへ行けと…?」


藤井「先輩こんなあからさまな罠に行く必要はないですよ」


間宮「…」


考え込む間宮


白狐「もし、この二人が来たら今回俺を初めて見つけれたボーナスとして多少質問に答えようかなぁ~っと」


間宮「…………本当に俺一人なら質問に答えるんだな?」


藤井「先輩!?」


白狐「できるだけ質問には答えようと思うけど答えられないものには答えないなぁ~」


間宮「その質問次第って事か…」


藤井「先輩、行く気なんですね…?」


間宮「今までろくに尻尾を出さなかった狐人をもしかしたら捕まえられるかもしれないからな…」


白狐「さて、いい加減にしないとあの二人が呼んだ奴らが来るからさっさと行くか」


そう言い残し姿を消す


間宮「…諒太この事は他の奴には言わないでくれよ?」


藤井「……わかりました、ですが気を付けてくださいね?」


間宮「ああ、わかってる」


白狐を追いかけに行く間宮


――――――――――

――――――

―――

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