⚔スマホ勇者の最後のたたかい!⚔

ちびまるフォイ

右手に剣を、左手にスマホを

「フハハハハ!! 勇者よ! 貴様のような半端なものに我輩は倒せまい!」


魔王に半殺しにされて村に戻ってきても、

村の人からかけられたのはねぎらいではなくあきらめの言葉だった。


「もう魔王に逆らうのはやめよう」

「どうせ勝てっこない」

「そもそも自称勇者なだけだし」


「う、うるさいうるさい! 俺は魔王を倒して世界を救って

 そんでめっちゃモテまくって、金持ちの余生を過ごすんだ!!」


勇者の崇高な精神は魔王に負けたところで折れることはない。

傷が治ってからはまた剣の修行をはじめた。

なにせこの世界には魔法という概念がなかった。


「くそ……せめて、戦闘中に傷を癒すことができたらな……」


剣を振っていると、勇者の頭の上に小さな機器が落ちてきた。


「痛っ! な、なんだぁ?」


拾ってみるとスマートフォン。

勇者はもちまえの理解力ですぐに使用方法を身に着けた。


「何個かすでにアプリが入っているじゃないか。

 なになに……ヒール?」


画面にあるアプリをタッチすると、スマホから柔らかい光が放たれる。

みるみる勇者の傷口がふさがっていった。


「すごい! これは噂に聞く魔法というやつじゃないか!

 このアプリで魔法を使うことができるのか! これで勝てる!」


魔王を倒せなかった原因は戦術にあることを勇者も知っていた。

しかし今、こうして魔法が使えれば話は別。きっと魔王を倒せるはず。


「……いや、待てよ。他にも魔法はあるのだろうか?」


勇者は気になってストアにアクセスした。

すると、ストアには多種多様な魔法が無料で公開されている。


「おお! これはすごい! たくさんインストールしよう!」


勇者はいくつもの魔法をインストールした。

もはやかつて存在した大魔法使いですら今の勇者には魔法に劣る。


「完璧だ! 魔王なんか目じゃないぜ!」


勇者はついに魔王城へ乗り出す……わけではなかった。

いくども経験した敗北が勇者を慎重にさせていた。


「……待て待て。バッテリーの問題があったぞ!」


スマホの右上に表示されているバッテリー残量。

これがなくなればいくら魔法を使える便利ツールでもただのフリスビーになる。


勇者はバッテリーを開発し、いくつも携帯して魔王城へと向かった。


「魔王のいる場所までは長い。温存しなくては!」


勇者はスマホを取り出さずに魔王のいる場所まで必死に進んだ。

道のりは長丁場になる。いちいちアプリを使ってはバッテリーがいくつあっても足りない。


ついに魔王のいる玉座までたどり着いた。


「ククク……また懲りずに来たようだな、おろかな勇者よ。

 今度こそ、そのしつこい息の根を止めてやる」


「フッ……ハハハハハ!!!」


「勇者……! なにがおかしい!!」


「魔王よ。俺が昔と大きく変わったことに気付かないのか?」


「なに……!? 貴様いったい何をした!」


「俺はすでにお前よりもずっと多くの魔法を扱える。

 のべ数百種類の魔法をインストールしているからな」


勇者の言葉に魔王は顔が青ざめた。

いくら魔王でもそこまでの魔法を扱うことはできない。


「そして、この数か月、一度も魔法を使わずに電池を温存している。

 いつでも魔王の体に魔法を叩き込める準備はできてるんだよ」


「ま、待ってくれ勇者よ……世界の半分をやるから話し合おう……」


「おろかだな魔王。世界のすべてを手に入れようとしているものに

 そんな要求に意味があると思ってるのか?」


勇者はスマホをゆっくり取り出した。

死を悟った魔王は必死に声をあげる。


「や、やめてくれぇ!! お願いだ!!」


「もう遅い!! くらえ!! 魔法100連発!!!」


勇者は魔法をタッチした。









"このアプリは最新バージョンではありません。

ストアにてアップデートをお願いします。" 

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