チョコレート大作戦

ひょもと

第1話

 ベランダでタバコを吹かしていると、ふと、中学生の頃のことを思い出した。

 チョコレート大作戦というものが、私と友人のIの間で敢行されたことがあった。


 作戦の簡単な内容としては、二人の共通の友人であるAにチョコレートをプレゼントしようというのである。しかし、ただの贈り物としてのチョコレートではない。作戦の決行日は、二月十四日、言わずと知れたバレンタインデーだった。


 つまり、チョコレート大作戦というのは、友人にチョコレートという名の希望を振りまき、裏でせせら笑ってやろうという性質の悪いたずらの一種だった。


 すでに、中学を卒業してからずいぶん時が経つが、それでもなお、この時期になると、あのチョコレート大作戦のことを思い出すのは、私にとってあの作戦が実に意義深いものであったからであろう。

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