第伍話「悪意 中國山地」
山陰陽
日本人民共和国が滅亡し、宇喜多清真が山陽道に覇を唱えていた頃、山陰道では、
それから14年の歳月が過ぎた現在、私達は
傭兵隊長の一人、
遂に開けられたパンドラの箱、この戦争の闇深き深層に、私は眼を疑った。大罪の廃墟に
第伍話「悪意 中國山地」
・原作:八幡景綱
・編集:十三宮顕
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薄暗い寝室の壁に、二つの人影がロウソクの傾きに沿って揺れ映っていた。
「久し振り」
一人は煙草を灰皿に押し付けて、スクッと立ち上がった。
「ああ、何年振りかな」
もう一人は背もたれの長い、古びた木製の椅子に腰掛けたまま、顔を上げて対面する者を見詰めている。
「正直、長過ぎた。例え、あの日より一年しか経っておらなんだとしても、私には半世紀ばかりの様に感じられたよ」
立ち上がったと共に椅子へ向けて歩み、椅子の前で立ち止まった。
「私も、君を待っていたよ。…会いたかった、ずっと」
膝を付けそうなほどに屈める相手の顔を見詰めて、感涙は彼の自制を堪えきれなかった。
「勿論だとも! この日を、この瞬間を、待っていたのだから!」
椅子すらも包むように、煙草救済体を寄せて抱擁せざるを得なかった。
離別の間に積み重ねられた想いは、
椅子より相手を抱き締めながら、涙声を耳元に掛けた。
「友よ…、我が朋友よ…」
戦友はこうして再会した。
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東西に広く、両海洋に挟まれた山陰陽(中國地方)の
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近畿地方を軍事制圧する
結果的に宇喜多は秀国を「調略」し、山陰陽をまんまと寝取ったような者である。今なお、近衛秀国からの覚えは良く、対して側近の近衛和泉と畿内軍閥の将軍である三好秀俊は彼を公私両面で嫌っていた。一応軍閥の頂点たる秀国の覚えを盾に服属後に出仕していた大坂を引き払い神戸を改めて拠点とした宇喜多はムスリムとしての立場を明確にして
加えて、宇喜多は反東京の意思を明確にする秀国の意向に従い、資源開発で莫大な利益を得ていた東京方の清水賢一郎の事業を妨害するために、ムスリムの多い資源国家から資源を多く輸入し、安価な輸入資源の国内流通量を増やして、出羽一揆以来の資金源の切り崩しに掛かった。畿内軍閥の実質的な宗主でもある中華ソビエト政府の有力派閥「太子党」とのコネクションを生かし、境港までの航路を中共海軍に守らせる等徹底したやり方は清水氏と彼らを軍事的に「保護」する役割を自負して来た東京政府に強い危機感を抱かせていた。
宇喜多は更に山陰陽の「未回収地」の平定にも手を出し、周防長州地域への政軍両面の浸透を進めて行った。益々、和泉達の不興をよそに秀国の覚えめでたくなる宇喜多だったが、彼の巧みさはその出来の良さ故により一層の脅威を敵対者達に与えてしまった。
防長にて県令を巡る血の惨劇が起きたのは、必然であった。
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