第145話『おいおい、怪獣大決戦の始まりか?』
向かい合う二体のドラゴン。
おいおい、怪獣大決戦の始まりか?
『ここ、ぼくの縄張りなんだけど! かってに入ってきて、あいさつもなく居座るってどういうつもりなの!?』
『黙レ! 生意気な若造メ! 偉そうニ指図をシオッテ……! いつマデも自分が絶対の強者だと思って自惚れるでナイワ!』
『きょーしゃ? そんなのより、ドラゴンだったらすじを通してよねっ!』
噛み合っていない会話。
とりあえず、ブラックドラゴンは割と怒っている感じだった。
普段、俺たちには寛容なやつだが、ドラゴン同士のマナーには厳格な一面があるらしい。
「こんなときにブラックドラゴンまで出てきやがった……! ど、どうすりゃ――」
リクは呼吸を乱しながら青ざめている。
『貴様のソノ、自分の強サに無自覚ナ態度が昔から気に入らなカッタノダ!』
『よくわかんないことばっか言わないでよー! むかしって、あんただれだよー!』
何とも気が抜ける返事だ。
でも、言語スキルがない他のやつらには、ブラックドラゴンが苛烈な威嚇を返してるように聞こえてるんだろうな……。
『スベテは空の上で決めようゾ! ナワバリ争いにナレバ、そうするのがドラゴン同士の決まりダロウ?』
『もー! じろぉに見つかったらおこられちゃうからさっさと終わらせるよ!』
バサァっと宙に浮かび、遥か上空に飛び去って行く二体のドラゴン。
ドラゴンゾンビにとって、仇であるリクよりもブラックドラゴンのほうが倒すべき相手として優先されているみたいだった。
過去に何かあったのかな?
「嫌だ、死にたくない……こんな……とこで……!」
怪獣決戦のどさくさで這って逃げようとするリク。
だが、
『あら、逃げられたら面倒だわ』
サキュバスの美少女が指を一振り。
魔法でリクの足を凍らせる。
「ひぃいいいぃいぃいっ! 冷てえっ! 足が動かない――ッ! ゴホゴホッ!」
毒も完全に治癒していないので再び咳き込みだす。
「ごふっ……パフィー頼む、魔法で氷を溶かしてくれ。インバーテッド……また毒が回ってきた……治療の続きを……!」
「…………」
「…………」
リクの要請を受けたボイン二人だったが、彼女たちは無言のまま動かなかった。
そして、互いに見つめあって頷くと――
「パフィー!? インバーテッド!?」
リクに背を向け、スタコラサッサーと走り出した。
「ど、ど、どうして!? なんで!? オレを置いていかないでくれぇ!」
リクが縋るように手を伸ばすが――
「ごっめーん! 勇者の仲間っていう立場は魅力的だったけどぉー!」
「アタシたちぃ! 何より自分たちの命が大事だからぁー!」
「ちょっと、こういう本当にヤバめなのは無理なのー!」
彼女らのダッシュは止まらない。
「お、おい、待っ……」
「そーいうわけでっ!」
「縁があったら!」
「「また仲良くやりましょー!」」
意外にも結構な俊足の持ち主だった二人はあっという間に魔境の森に消えていった。
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