4月22日の芽吹き(1)
集合場所は、学校から2駅離れた、この辺りでは一番大きなターミナル駅にした。
午前11時。お昼時、混み合う前の時間帯。
この時間なら、きっと彼女もお腹を空かせてくる。
そうすれば、自然とどんなお店にも入ることもできるだろう。
一応、昨日の内にいくつか目ぼしい店をピックアップしておいた。
どこもデートスポットになっているような
おしゃれなカフェレストランだった。
もちろん、立食のためのお店もいくつかリサーチしてある。
そこにはお昼を食べた後に向かう予定だった。
時刻は10時50分。
電車で来るならそろそろこの駅に着くはずだ。
早く会いたい。そんな気持ちを抑えつつ、改札を出てくる人の中から
中原さんの顔を探す。
自分がこんなにも誰かのことを想うことになるとは
入学式のときには、思いもしなかった。
「あっ、中原さん!」
改札から出てきた中原さんをすぐに見つけ、小さめに手を振って合図する。
今日は学校ではないため、おれも中原さんも私服姿だった。
「お待たせ。ちょっと遅れちゃったかな?」
「いや、そんなことないよ」
実際、約束の時間まではまだ少し余裕があった。
待たせるといけないと思い、おれは少し早めに家を出たが
かえって気を遣わせてしまったかもしれない。
私服姿の中原さんは、制服のときよりも更に小動物のように見えた。
あまり見過ぎるのは良くないと思いつつ、自然と目は中原さんを追いかけてしまう。
「変、かな?」
「え? いやいや。そんなことないよ。
すごく、かわいいと思う」
「そうかな……。ありがとう」
思わず顔が紅潮してしまうような、恥ずかしい言葉が口から出てしまい
言った後で、自分でも驚いた。
白いワンピース姿の中原さんも、対比するように顔が赤くなっているような気がした。
「それじゃあ、とりあえず、行こうか」
「うん」
自分でも緊張しているのがわかるくらい、手にびっしりと汗をかいていた。
それでも、おれはなけなしの勇気を振り絞って、彼女と一緒に歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます