第39話:もうひとつの可能性

 屋敷にやっと静寂が戻った。


 普段の暮らしが出来るようになった。


 だが・・・・

あたしの胸には見えないトゲが

突き刺さっていた。


「あんただろ・・・光輝・・・

黒木を殺したのは・・・・」

あたしが苦心の末、導き出した答えだ。


「フフ・・・、

わざわざそんな事を言うために、

ここに来たのか。」


「いや、今の別れの曲を聞いて・

・・・、

ヒラメイた。」


「フ・・・、確かに、

オレの部屋は、4階だしな。」


「防犯カメラも自在に操れる。

何よりママ母やシオンたちには、

雅さんと・・・・

レイラの怨みがある。

そうだろ。」


「フ~ン・・・

だが、シオンもバンド・オズの

メンバーも俺には殺害は無理だ」


「ああ・・・それが・・・

それこそが、オズなんだ。」


「ふ~ン・・・」

 光輝は鼻で笑った。


「殺害したいヤツには、事前に

アリバイを用意しておき、

その間にまったく見ず知らずの

人間に殺害を依頼する。

大掛かりな交換殺人。

その計画をするヤツがオズなんだ。」


「なるほど・・・、

よく出来た答えだ。

だが・・・、俺じゃない。

真犯人は俺じゃないんだ。」

かすかに首を振った。


「あんた以外、まだリストに

残ってンのか。」


「フフフ・・・」

背後から笑い声。

「え・・?」

あたしは振り返った。


 そこには、美少年が壁に凭れて、

立っていた。


 レンだ。

いつからそこにいたのか。


 あたしはレンを睨み付けた。


「まだ、いるじゃないか・・・

榊 純一を殺したヤツが・・・」

 レンは微笑を浮かべた。


 な・・ナゼ、ここに、榊・・・

オヤジの名前が出てくるンだ。


「フ、まだ、あの事件の犯人が

解らないンですか。」

鼻で笑った。


 な、お前にはわかるって言うのか・・・・


「誰なンだ。あの事件の犯人は・・」

あたしは、挑むように睨んだ。


「ダメだなぁ・・・

自分で解答を導(みちび)き

ださないと・・最近の子は・・」

お前に言われる筋合いはない。


「っるさい。いないだろ。

あの日、あの嵐の夜・・・

地下室に・・・・」

その時、ひとつだけ思い当たった。


  もうひとつの可能性・・・・


 そうだ。出来る・・・

彼女なら・・・

オヤジを殺せる。


 だが・・・、

動機は・・・

いや、動機は、またの機会にしよう。


 今は、彼女には実行できると言う

事だけでいい。


 

 やがて、エレベーターのドアが開いた。


 高松みいながコーヒーを持って

やってきた。

「レイラ様~。ご注文のお紅茶で~ーーす。」

伸ばすなって・・

アニメ声がキンキンする。


「はい、光輝様、レン様。コーヒーです。」


「ありがと。みいな。」レン。


「何か、他にご用があったら、

何でも申し付けて下さい。」

引き返そうとした。


「少しだけ・・」とあたしが

みいなの背中に話しかけた。

「話を聞かせて。」


「え・・レイラ様、話せるンですか。」

振り返った。


「まぁね・・・」コッホンと咳払いし、

「あなただったのね。」

少し間が出来た。


「え・・、何がですか・・・・」


「榊純一を殺したのは・・・・」


「え・・、榊さんですか・・・

誰なんです。それって・・・」


「惚(とぼ)けないでよ。」


「惚けるも、何も・・・」


「あの日・・・

みいなが初めてこの屋敷へ

やってきた。そこで、ナゼか

榊純一も姿を見せた・・・」


「そうなんですか・・・」

気乗りのしない声だ。

いつもの明るい声ではない。


「びっくりしただろうな・・・。

榊を見て・・・」


「ですから・・榊さんって・・・

ああ、

あの時の・・・変なオジさんですね。

お嬢様にオッパイ見せろとか

言った。」


「ああ・・・、」


「それが、どうかしたンですか~?」


「ヤツは・・・」

あたしは、みいなを睨み付け、

「あんたのお父さんだろ。

実の・・・!!」


「え、何言ってンですか・・・」

少し、顔が引きつった。


「これは、みいなの履歴書だ。」

徐(おもむろ)に、レンが取り出した。

「コレには、父親の欄がない・・

・・・。

つまり私生児ってワケですね。」


「ええ・・、そうですけど・・」

みいなの顔色が曇った。


「あなたは、小さい時から、

あの榊にDVを受けてきた。母親もね。」


「・・・・」






































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

砂の城:一千億の遺産の行方 オズ研究所 《《#横須賀ストーリー紅白 @aitr8228

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ