砂の城:一千億の遺産の行方

オズ研究所 《《#横須賀ストーリー紅白

第1話:バス爆破事件

 世の中には大きく別けて2つのタイプがある。


 ひとつはツイてるヤツ……。


 そしてもうひとつは産まれながらにツイてねェ~ヤツだ。



 あたしの場合、間違いなく後者のツイてね~ヤツの部類だろう。



 それも飛びっきりのヤツだからタチが悪い。




 小さい時に母親が失踪し以来、ギャンブル狂のDVオヤジと二人暮らし……。




 毎日のように借金の取立てに追い回され、虐待に遭って小学校さえ、まともに行ってね~有り様だ。




 当然だが今じゃ珍しい中卒だ。

 学歴社会から落ちこぼれってヤツさ。



 そして、今、隣りに座ってるお嬢様……




 龍崎レイラはツイてるヤツに違いない。


 自分じゃ、親が厳しくて束縛されてばかりって嘆くけど、あたしからすりゃぁ~、そんな事、苦労でもなんでもない。


 当たり前のようにキレイでフカフカのベッドで寝られて金の苦労も知らずにメシに有りつけるのが、どんなに幸せか知りもしね~で……


 親から干渉されて窮屈だとか、ウザって~とか、あたしからすりゃ~、贅沢ってモンさ。


 オヤジや借金取りから、イヤってほど首を絞められてアザが出来た事なんかありゃ~しね~だろう。


 同い年、双子かと思うほど似た顔立ち……


 なのに育った環境は天と地ほど差がある。


 初めて女子トイレの鏡でレイラを見た時は、ドッペルゲンガーじゃないかと心配になった。


 都市伝説なんか、詳しくないが自分そっくりのドッペルゲンガーを見たヤツは近い将来、命を落とすって噂だ。


 ま、そんな伝説、信じちゃいね~けど……


 アスカのいね~、この世には大して未練はね~ンだけどね。


 それより今の問題は、さっきから最後部の座席にひとり座ってる怪しげな中年男だ。


 ニット帽にマスクをした得体のしれない4、50くらいの目付きの怪しいヤツ。


 何やら大事そうにカバンを抱えて乗ってきて、ガラガラの最後部座席に座った。


 目に狂気をはらませ異様に光ってる。汗も尋常じゃない。


 マジで、こ~いうヤツはヤバい。

 薬でもやっている感じだ。


 そんなあたしの心配をよそに暢気のんきにレイラお嬢様は声をかけてきた。

「ねぇ、ルナ」声まで綺麗だ。


「え、ああ…、何……?」

「マジでスマホ、持ってないの……」


「え…、ああ、悪い……」

 あたしはぶっきらぼーに応えた。


「別に、じゃ、コレ、貸しといてあげるよ」

 そういって赤いスマホを出した。


 あたしは一瞬、迷った。


 ありがたく受け取った方がいいのか。

 それとも……


「私たち、こうして出会ったのは運命だと思うの。ね?」

 レイラは屈託のない笑顔で同意を求めた。


 ほどこしを受けるようで何処か釈然としない。

「じゃ、預かっておくよ……!」

 だが無下に断る事も出来ず、そういって受け取った。


 今時、あたしたちの年代でスマホを持ってね~方が珍しい。

 コレだからプアーなヤツはイヤなんだ。


 スマホをポケットにしまいながら背後の男を見るとヤツは何やらカバンを開き細工をしていた。


 横でレイラが話しかけてくるが全く耳に入らない。


 ヤツは一体なにをしてるンだ。

 手にはライターが握られていた。

 ヤバい。まさかライターで火を点ける気か。


 あたしが止めに入ろうとした矢先、その怪しげな男はサッと立ち上がった。


「うっわ~~~~❗❗❗

 こんな世の中、ぶっつぶしてやる~❗」 

 と急にワケのわからない事をわめきたてライターに火を点けた。


 運転手も乗客も騒然だ。

 全員が最後部を振り返った。


 マジか、ど~する。

 ここから飛びかかってライターを叩き落とせるか。


 だが、異変に気づいた運転手も急ブレーキをかけ、キッキキーという耳をつんざくような金切り音と共に前方へ突っ込む形になった。


 あたしは何とか前方の座席に手をつき受け身を取った。


「キャ~~~❗」

 レイラも前方へ投げ出される感じだ。


 その間にも最後尾の中年男は雄叫びをあげ、ライターをカバンの中に突っ込んだ。


「な❗❗」思わずあたしは立ち上がって逃げ出そうとした。


 一瞬、レイラの事が脳裏をよぎり、手を差しのべた。


「逃げるンだ~~~~❗❗❗❗」

「え……? 何……❓❓❓」

 あまりの事にキョトンとしてる。


 その瞬間、ボーンという爆発音と共にカバンが爆発を起こした。

「ギャアァァ~ー~ー❗❗❗❗❗」

 怪しげな男は絶叫を上げ火に包まれた。


 クッソォ~、何があったか知らないが焼身自殺に巻き込まれるのは勘弁してくれ。


 あたしは思いっきりレイラの手を引き、逃げようとしたが爆風で吹き飛ばされた。


「キャ~~~~❗❗❗❗」

「ウッワ~~~❗❗❗❗❗」

「ギャ~ーーーー❗❗❗❗」

 悲鳴と絶叫が交差した。

 バスの中はパニックだ。


「た、助けてェ~~~❗❗❗」

 レイラが手を伸ばしたが、火は容赦なくバスの中で燃え広がっていった。


 乗客乗員は阿鼻叫喚。まさに地獄絵図だ。


 アッと言う間に火は燃え広がりレイラも飲み込んだ。


 レイラは断末魔の絶叫をあげ火の中に消えていった。


 冗談だろ~❗


 業火は容赦なくあたしにも燃え移っていった。


 ちっくしょ~、死ぬにしても顔だけはキレイに死なせろよォ~~。



 やっぱ、とことんツイてね~。

 あたしは、自分の人生を呪った。






 よっぽど前世に悪い事をしたのか、知らね~が今度、産まれかわったら絶対、レイラのようにツイてる人生を送ってやるんだ。





 絶対に……








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