第三話 猿がいた。
猿がいた。
おもしろい文字をさがして、いっしょけんめいにキーボードをたたく猿だった。
おもしろい文字をさがしていると、ある日、ディスプレイにおもしろい文章が表示された。
青々としげった山の木々。
それだけがディスプレイに表示されていた。
それだけなのに、ふるさとの山のあつい夏を思い出させる文章だった。
それで猿は文字の組み合わせによって新しい表現が生まれることを知った。
猿はさらにいっしょけんめいにてきとうにキーボードをたたいてみた。
おいしい木の実がみのった。
つめたい川の水が流れた。
さむい冬がやってきた。
次々とふるさとを思い出させる表現が見つかった。
ここまでくるのに十年かかったが、サルにはどうでもよかった。
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