1999年9月3日 『曇天』

 今日は終日、久しぶりの雨模様だった。

朝、心地良い雨音に促されるように

目覚ましより少しだけ早く目が覚めた。

カーテンをゆっくり開けると

雨が降っているにも関わらず外は明るい。

窓から見える空を見上げると、

薄い曇がどこまでも覆っていた。


 一昨日の彼らの決意と

私の立ち位置と役目・・・

特別、何かを任された訳ではない為、

私は彼らの邪魔にならぬよう、

出来ることを精一杯するだけだ。

あくまで、彼らのサポートとして。


 花音君の中に存在する人格の一人、

キーマンと成るであろうセツラという青年。

シオン君のことについては

そのセツラという青年が

一番把握しているであろう。

彼が素直に教えてくれるかどうかは別にして

まずは、彼に逢えるかが一番の問題だ。

花音君が色々試してみるとのことだったが

花音君が一人の時に出てきたとしても

何することもできない。

果たして出てきたかも、出てきたとしても

セツラという青年かどうかも知りようがない。

誰かがそこに居ないといけないことになる。

勿論、彼もそのことは分かっているだろう。

ゆりあさんか、恵梨守さんか・・・

それとも、シオン君の時と同様に

サインありで私に連絡が来るのか。

何れにせよ、待機は待機だ。

果報は寝て待てとはよく言うが

そんな悠長に構える気分でもない。

かといって、こちらから

急かす訳にもいかない。

この歳になって『強い好奇心』を覚えるなど

考えもしなかった。

年甲斐もなく気持ちが高揚しているようだ。

この『得体のしれない楽しみ』は

私を奮い立たせるには十分だが

体力が付いていけるかが問題だ。

そんなことを考えていると

雨音が止んでいることに気が付いた。

窓から外を眺めると

雨は上がり、曇り空から薄日が射していた。

部屋の柱に掛けてある時計を見ると

お昼を5分程過ぎていた。

しかし、今日は食欲もなかったため

梅干し粥を作って少しだけ食べた。

その後は、散歩以外の日課をこなし、

何事もなく平凡な日常を過ごした。

夕飯は、お昼に作った梅干し粥の残りと

目玉焼きを作って食べた。

なんとも朝食っぽい夕食だったが

お腹は十分満たされた。

結局、今日は妄想天国な一日だったが

幾分、冷静に自分を見つめ直す

いい機会となった。

成るようになるであろう来るべき日に向け

気持ちの整理ができたことで

今はだいぶ落ち着いている。

今日はいつもよりだいぶ早いが

床に就くことにする。

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