勇者?魔術師?いえ、管理人でした

ユー@焼き

第1章 第1話 勇者?魔術師?いえ、管理人でした

「起きて…起きて…」


『嫌だ…眠い…あと5分…』


「起きろって言ってんでしょ!」


バチーン!硬いものをハリセンで叩いたかのような音がした。後から、馴染み出るような痛みが出てくる。


「痛って〜、何すんだよ!!てか、あんた誰だよ!」


「ふふふ、聞いて驚きなさい、私はキャス!大天使キャス様よ!!」


漸く冴えてきた身体を起こして俺はキャスと名乗る眼前の人物を見上げた。朱色の髪と目、豊かな胸、今まで見たことないほどの美しい顔…。眼福だ。


「俺、生きてて良かった〜〜!!」


「あんた死んでるわよ。」


「は?」


唐突に予想外な言葉を聞かされて茫然としていると、


「だ〜か〜ら〜あなたは死んだの。ゆーあーでっど。あんだーすたん?」


「お、おーけー。」


俺は困惑しながらも頷く。


「まあ、わかってくれたなら良いわ。取り敢えずあなたは死んだの。死因は諸事情で教えらんないんだけど。」


「諸事情!?」


「そ、諸事情。それで、あなたにはあなたが生きていた世界とは違う世界に行ってもらいたいの。所謂、異世界ってやつね。」


「い、異世界!?マジで!?夢にまで見たあの異世界!?」


俺はかなり興奮していた。何故なら死んだ原因は全く思い出せないが、その時の記憶はそのまま残っていたので、自分が異世界に憧れを抱いていたのがわかっているからだ。勿論今もそうだ。


「で?で?どんな世界なの?」


「凄い食い気味なのね。ええと、剣技や魔法が存在する基本的になんでもありの世界ね。」


「マジで!?やった〜!!俺が世界を救う勇者とか魔術師になれるってことか〜!」


「は?何言ってんの?」


「へっ?」


美少女の意外な返しに変な声が出てしまったのも束の間、


「あなたにやってもらうのは管理人、そう!世界を統治する者よ!だから、基本、世界の住人に関わるのは厳禁よ。」


俺は衝撃の宣告を受け、膝をついた。


「え、嘘でしょ?嘘って言ってよ!人と関われない異世界とか、カレーのないカレーライスだよ!」


「ベタな例えを持ってきたわね…。でも、仕方ないじゃない。もし、あなたと住民の誰かが接触しようものなら、その人は消し飛んでオサラバよ。」


「やだ〜!何もできないなんてやだ〜!そんなの異世界にいる意味ないじゃん!!」


俺は赤ん坊の様に泣き叫んだ。側から見たら見るに耐えない醜態を1分程続けていると、大きな溜息と共に天使は口を開いた。


「分かりました分かりましたよ!!じゃあ、あなたの力を100分の1にしますからそれなら行っていいわよ!」


「ほんとに!?でも100分の1ってかなり弱い様な…。」


「何を言ってんのよ!管理人の力を100分の1にしたところで世界の住民は誰も勝てやしないわよ。」


そんなこんなで俺〔輪熊豹悟〕の異世界行きが決まったのだった。

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