第6話 裏切り
投票タイムが終わり、全員分の集計結果が端末に表示された時、東大輔は激怒した。
『東大輔 黒墨凛にペンをプレゼントする』
『池澤文太 蒼乃恵美に壁ドン』
『谷村太郎 椎名真紀に昔話をする』
『吉川敦彦 黒墨凛と図書室で五分間二人きりで過ごす』
『蒼乃恵美 東大輔と手を繋ぐ』
『黒墨凛 池澤文太を慰める』
『椎名真紀 廊下で古川敦彦と手を繋ぎ、五歩歩く』
『山吹日奈子 池澤文太に抱き着く』
自分の端末に『黒墨凛にペンをプレゼントする』というマニフェストが表示されたのだ。
「これは何の冗談だ? 何で俺は黒墨にペンをプレゼントしないといけないんだ!」
「そういうルールですから、仕方ありませんよ?」
東の怒りをラブはニヤニヤしながら受け流す。それだけでは怒りが収まらない東は、投票した女性陣に怒りの矛先を向けた。
「お前ら、正直に答えろ。俺に投票したのは誰だ?」
真紀と恵美は正直に手を挙げる。その答えに東の怒りはさらに爆発した。
「どっちかがウソを吐いているってことだな。そうじゃないと二票以下のマニフェストが俺の端末に表示されるはずがないんだよ。正直に言え! 嘘つきはどっちだ?」
彼からの質問に、真紀と恵美は黙り込むことしかできなかった。中々答えが出ないことに苛立ちを覚えた東は端末を取り出す。
「分かった。恵美が裏切り者かもしれないんだったら、お前に預けてある物を返してもらう」
そう言いながら東は端末上のバンクという文字をタッチする四秒前、恵美が動く。
「そっちがその気なら……」
恵美は自信満々に先程購入したチェンジというアイテムを使った。標的はもちろん一番ポイントが多い黒墨凛だ。だが、黒墨凛は動揺することなく、無表情を貫いている。
「遅かった」
無表情な少女の呟きの後、恵美の顔は一気に青くなる。今の自分が所持しているハートが二個になっていたのだ。
「何で? 黒澄さんは……」
東が蒼乃に預けていたポイントを引き出した時、恵美の全身に電流が走った。最初の脱落者は、床に崩れ落ちて動こうとしなかった。
「もう脱落ですか? もう少し楽しませてくださいよ」
ゲームマスターのラブが嫌らしく笑った後、教室のドアが開き、四人組の黒ずくめの男達がゾロゾロと入ってくる。彼らは脱落した蒼乃恵美の周りに集まり、彼女の体を掴み強引に立たせた。男は慣れた手つきで、逃がす暇さえ与えず、彼女を羽交い絞めにする。
もう一人の男は暴れて抵抗する恵美の首筋にスタンガンを当てた。彼女が気絶したことを確認した男達は、少女をどこかに運ぶために動き始める。
一部始終を目撃した東は、怒りと共に黒ずくめの男を殴ろうとした。
「恵美を離せ!」
しかし、東のパンチは黒ずくめの男に届くことはない。なぜなら、それよりも先に黒ずくめの男のキックが、東の腹を蹴り飛ばしたのだから。
ラブは暴力的な行為を見て、クスっと笑った。
「最後まで生存した時の願いにしたらどうです? 愛する彼女さんを解放するって。最も彼女を脱落させたのは、あなたですよ? 東様」
「何だと!」
「もう少し東様が蒼乃様を信じていたら、こんなことにはならなかった。巧妙な罠に騙された東様も悪いけどね。それでは黒墨様。皆様に分かりやすく説明してくださいよ。あなたが何をやったのか?」
ラブは覆面の下で笑顔を作り、視線を黒墨凛に向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます