第2話

本家の後妻として母が15離れた父の元に嫁いだのは、48年前。

父は優しい人ではあったが、なぜか結婚生活には恵まれず、母とは4度目の結婚だった。

一番目の前妻に生まれた娘と2番目の前妻に生まれた娘、そしてわたし、姉妹はみな腹違い。

代々の旧家でありながら完全な女系家族のこの家は、生まれ来る赤ん坊のほとんどは女の子だった。

父は婿養子を取りながら引き継いできた家系には珍しく直系の男子で、ずいぶん大切にされていた。 

一番上の姉と母は九つしか離れておらず、当時思春期だった彼女にとって母は受け入れがたい存在だっただろう。

そんな中でわたしは男子として生まれるべき期待を一身に背負っていた。

なぜなら、わたしが男子であれば姉たちは本家の跡取り娘という役目から解放されるのだ。

しかし残念なことに、わたしはやっぱり女子だった。

母の胸中は、さぞかし複雑だっただろう。

わたしがまだ幼稚園生だった頃、姉たちは次々に嫁いでいった。

本家の子供として残ったわたしは、必然的に跡取り娘となったのだ。

母の子育ては大変厳しかった。

自分で言うのも何だが、子供の頃の自分は出来が良かった。

それ故なのか、自分は母に褒められた記憶が無い。

どんなに頑張っても、どんなに結果を残せても出来て当たり前で、更なる課題が待っていた。

出来なければ叱咤され、母の思惑と違う所があれば無視される。

次第にわたしは自己肯定感が低くなり、いつも寂しさを抱える子供になっていった。

それは今でも、わたしのなかに根強く深い影を落としている。


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