ブランニュー

 朝が来る。コップになみなみ水を汲んで、くすりを飲む。小さな錠剤を飲み下すには一口でじゅうぶんだ。残りはイチゴの鉢にやる。小さな苗は緑が濃く、ふてぶてしい。土が乾いたらたっぷり水をやれとのことだが、毎朝ちゃんとからからになる。しばらく雨が降らないからだ。おれも日照りだ。イチゴと水を分けあっている。


 日めくりをやぶる。うまくない。ちぎれて残った昨日の欠片を、引っ掻き、とりのぞく。さっきイチゴの苗からも余分な花を摘んだ。これからふくらむ果実はちくちく毛羽立ち、おれを睨みつけていた。やつは自分を竜の仔だとでも思いこんでいる。爪にはさまった昨日がぽろぽろ紙ふぶきになりながら、「あんたたちよく似ている」と笑った。


-----------------------

(300字)

#Twitter300字SS・お題「新しい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る