ひどく誠実な(つもりの)父親
遊歩道から見下ろした海は赤潮で澱んでいた。
「気味が悪い」
娘の言葉にぎくりとする。「君が悪い」と言われたように空耳したためだ。
「赤潮だよ。プランクトンでね、夜になると光るんだ」
夜光虫と呼ばれる彼らは大量発生すると、ぶつかり合って青白く発光する。夜、波は星をまいたみたいに瞬く。
見たい見たいと娘がねだるのを、また今度とごまかした。夜まではいられない。けれど今度会うときは赤潮の季節ではないだろう。いつからか、僕はひどい嘘つきになってしまった。鉄錆色の海は低く唸って生臭い。
あと30分。別れた妻が娘を迎えに来る。
「こうやって海が濁るから、夜光虫が見られるんだよ」
弁解みたいに言う僕を、娘がぽかんと見上げた。
(お題:光)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます