第13話
「いーんでない」
ホスセリは楽しそうに、試着室から出てきたノイズの格好ににやにやしている。
「あの、ほんとにそう思ってます?」
刺繍が丁寧に施されたカーキのブルゾンの背中を気にしながらノイズは不服そうだ。服自体は気に入っている。日本的だ(と少なくともノイズは思った)。
カンジで”威風堂々”と書かれていると店員に教わってとりあえず購入第一候補はこれ。
「いやさ……いふうどうどうはどうなのかと思うけど、君がいいなら止めはせぬ。
なんか外国の人に人気なのは事実だし……」
まあ俺ならこっちだな。
とホスセリが引っ張ってきたのは黒のブルゾンで後ろに
「がいこつ?」
「どこにでもありそう?
ドッコイこれ有名なウキヨエって絵画のコピーでさ。これはかっこいいと思ウね」
右から左に襲いかかろうとする巨大な骸骨に若者が立ち向かっている。
ウキヨエはよく知らないが、確かにありがちなドクロモチーフのキャッチーさではなく背中がキャンバスになったような不思議なデザインだ。
「えー……これにしようかなあ」
「おう、漢字が好キならTシャツの方が種類あるしな」
「あ、そうか僕お土産も買わないとなんですよね、Tシャツいいかも兄さんとか姉さんとか」
家庭教師には別にいいか、とうきうきしている若者に、ホスセリは言いにくそうに
「友達いないノかお前……」
と呟いた。
結局黒のブルゾンとカンジの書かれたTシャツを何枚も買った。
「そンでさ、シンセサイザーできるのは居るんだ。」
コートのポケットに手を突っ込み二人でガードレールに腰を掛け白い息を吐きながらホスセリがきらきらした目で言う。そもそもシンセサイザーを知らないノイズは買い物ができて上機嫌なので紙袋を抱えて、すごいですね!と適当な返事をした。
「でさ、歌える?
楽器使える?」
「えっと、ピアノとヴァイオリンは小さいころ習わさせられて少しだけできますけど……」
「よしギター頼む」
「へ?」
同じ弦楽器でそ? ひひっと笑ってホスセリは無理やりノイズの肩を抱いた。
「これでバンド仲間確保!
やぁったね!」
「その、え?」
「主に日本のロック歌ってるんだ。
今度CD貸す……よりユーチューブの方がいいかな」
「あの言いにくいんですけど」
「なんだよやりたくないのか?
楽しいぞ女の子にモテるかも?」
「ロックって聞いたことなくて……」
……。
「はあ!?」
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