第6話
その後ヤマザキと二人で精霊魔法の試し打ちを色々行ったが、一向に成果は上がらずに途方に暮れる事となっている。
「カタイシこの岩の上ポカポカして気持ち良いニャ」
「おお、本当だ気持ち良いなこの岩。日当たりが良いから暖かいんだろうな」
俺とヤマザキはお金持ちの家にある庭石並みの大きな岩の上でゴロリと横になる。
「ポカポカの岩と名付けるニャ」
「岩盤浴の岩の方が健康に良さそうじゃないか?」
ゴロリと寝返りをうつと肩甲骨の間に岩の突起が絶妙な力加減で当たる場所を発見した。
「お!ここ気持ち良い。良い場所見つけた」
「ニャに?十五分で代わるニャ!」
「えー……俺が見つけたのに……」
「サラミ五本でその場所の権利を買うニャ」
「それなら良いかな?でもそのサラミ盗品だろ?」
「お布施だニャ」
「……」
「……」
今日は天気が良いな。白い雲が青い空を流れて行くのが見える。
「なあヤマザキあの雲、何に見える?」
「アレニャりか?んー……サンマだニャ」
「ばっかおめぇ仮にもファンタジーの精霊なんだから伝説の剣とか言えよ」
「どこが剣ニャりか?どう見てもサンマだニャ!百歩譲っても鮎だニャ」
「夢が無いなあ」
「考えて見ると良いニャ。カタイシあんなデカイサンマの塩焼きがあれば大儲け出来るニャりよ?女冒険者のオッパイに挟まれ放題ニャ」
「サンマに見えて来た」
「ニャ?」
「……」
「……」
「おいお前ら」
「……」
「ヤマザキ呼んでるぞ?」
「僕じゃ無いニャ、精霊を見れる奴なんかこの辺には居ないニャ」
「俺だって知り合いなんか居ないからな」
「……」
「……」
「良い加減せんか馬鹿者ポヨが!」
デカイ怒鳴り声と共に今まで寝転んでいた大岩が真っ二つに割れて、俺とヤマザキが地面に放り出された。
ヤマザキが地面の上でも態勢を崩さずに寝転んでいるが俺は流石に身体を起こした。
「あ、ここも暖かいニャ」
「マジで?」
「おい無視するなポヨ!」
怒鳴り声を張り上げる声に振り向くとそこにはパンツ一丁のボディービルダーが額に血管を浮き出させて立っていた。
太陽をたっぷりと浴びて黒く日焼けしてテカる肌に、背中から伸びる透明な羽根が異形を放っている彼はズカズカとこちらに歩み寄りヤマザキの襟首を摘み上げた。
「おいヤマザキ!事情聴取に来たポヨ!」
「あ、天下一先輩チワス」
どうやらヤマザキの先輩らしい。
「我も精霊名人として生きて来て数千年になり最早流れる年月も曖昧になってきているポヨが、隠れてお前らのやり取りを観察していた我の二十二分三十秒を返せポヨ!あんなに中身の無い会話は初めて聞いたポヨ!そしてそっちの駄目人間、貴様がヤマザキの契約者ポヨか?」
「初めましてカタイシと申します」
「うむ。我は天下一べるお。青組の組長をやっておるポヨ」
「ティンカーべ……」
「天下一べるおだ!間違うなポヨ!」
「あ、はい」
昔からこう言う押しの強い感じの人は苦手だ。
「さてヤマザキ四級精霊よ貴様が最近昇級して初段精霊に格上げになった雰囲気をフンワリと悟って事情聴取に来たポヨが、詳しい経緯は聞かせて貰えるポヨな?」
雰囲気を悟って事情聴取に来たのか?随分とフンワリした理由だな精霊ってのは……
「あ、えーと、ここにいるカタイシが紅組幹部らしき精霊の精霊石をどこからか入手してですね、僕に与えた事によって昇級したんですニャ」
あ、ヤマザキのヤロウほぼ丸投げしやがった。
「ほほう。カタイシとやらその精霊石はどこから入手した物かな?」
うわ、すごい笑顔なのに胸の筋肉がピクついてる。
「崖から落ちたと思ったら偶然崖下に大きな犬がいまして、不幸な事故が重なりましてなんと言うかこう……犬の頭に鉈が刺さりました」
「怖いポヨ!」
「怖いニャ!」
「いや、事故ですよ事故」
天下一先輩に俺達の出会いから現在の困った事までを順を追って説明をした。
「と言う訳なんですよ」
「そう言う訳だったポヨか」
話の早い天下一先輩に比べヤマザキはすっかり丸投げ気分で暖かい石を見つけてゴロリと横になっている。
「自分の属性が解らなくてあの様な中身がスカスカの会話に逃避してたポヨね?」
「いえあれは一応真剣に話してたんですが……」
「いや、解ってる。解ってるポヨ!この天下一精霊名人が初心者雑魚精霊名前だけ初段のヤマザキの属性を調べてやるでポヨ」
「え!?そんな事が可能なのですか?」
属性が解って精霊魔法が使える様になれば今夜から馬小屋暮らしは卒業出来るのでは?いや、上手く行けばオッパイに挟まれて寝るのも夢では無い!
「天下一先輩宜しくお願い致します!」
「うむ。我に任せておくが良いポヨ。ヤマザキこっちに来るポヨ」
暖かそうな岩の上でうとうとしているヤマザキを叩き起こし、天下一先輩の前で正座をさせる。
「本当に解るのかニャ……」
今一つやる気の起きないヤマザキ頭の上で天下一先輩が大きな魔法陣を出現させた。
「汝が司りし精霊の力を我の眼前に詳らかにせよ」
ボディービルダーの身体光を放ち天下一先輩がゆっくりと目を開く。
「うむ。解ったポヨ」
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