夢夢

冷凍氷菓

夢の中へ

長い間夢を見ていた。

 窓から差し込む朝の日差し。部屋には荷物が散乱していて、片付けるのが大変そうだ。

 昨日何があったかを考えてみるが、思い出せない。寝起きはいつもそんな感じだ。

 長い間夢の中に私はいた。

 しかし実際は眠りについてから七時間ほどしか経っていない。

 私はいつもそこに違和感を感じていた。どう考えても、矛盾している。

 私は確かに数ヶ月分の経験をしていた。はずだ。時計を見れば七時間ほどしか経っていないのはとてもおかしく奇妙な話だ。

 私はベットから抜け出し、散乱していた荷物をまとめる。

 財布、メモ帳、化粧の入ったポーチ、通勤の時に読む本、その他仕事の資料。どうしてこんなに散らかっているのか。

 やはり、昨日のことは思い出せない。お酒を飲みすぎて記憶が飛ぶということも無いだろう。なぜなら、同僚との飲み会では度数の低いサワー系を飲むようにしているためだ。

 以前、私は酔いつぶれてしまい、朝起きたときは友人の家になぜか居たこともありそれからお酒はなるべく度数の低いものを選ぶようにしている。失敗をしてから人は変わるものなのだと身を持って経験した。

 私は支度を整えて家を出る。春になると、何だか心も体も健康になった気がする。腕を大きく伸ばして、青い空を手で掴もうとする。そんな自分を馬鹿にしたようにくすりと一人笑い、会社へと向かう。

 来週には桜が満開になるだろうとニュースで言っていたので、今年も社員で花見でもするのかと考えながら歩いている。場所取りはできればやりたくないと願いながら。

 毎年のことでこの願いは尽く無駄なものに終わる。それを知っているからどうしても「どうせ私でしょ」と半ば諦める。

 電車に乗り込むと相変わらずの満員。その満員の電車に揺られながら、私は本に必死にしがみつく。ここでは読書をすることさえ戦いになってしまう。

 電車で格好つけるためじゃないのか。とか思われそうだけれど。絶対そんなことはない。と思う。自宅でもちゃんと私は本読んでますから。ただ、電車にぼーっと揺られるのが嫌いなだけ。

 そんな中で今読んでいる本は、「魔法のコトバ」とか言うもので、言葉は魔法であり言ったことは実現する。良いことも悪いことも。だから前向きな発言を心がけ人間関係のみならず、人生を変えましょうといっている本だ。一言で言えば自己啓発本である。私はこのような本をよく愛読する。少しでも人間関係や仕事上のサービスを向上させるために。

 次の駅で私は降りて会社へ向かう。この日々は毎日繰り返し、変化が嫌いな私にとっては幸せな日々である―――

 

 

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