空き地
櫻庭 春彦
行く道
午前7時45分。
市立第二中学、2年生の
通学路には、非日常な日常が転がっている...と思っている。
街路樹の根元のタンポポも、空き地のスミレも、
誰も見ていないなら、俺が独り占めすればいい。
見逃される季節の移ろいは、きっと俺だけにその恩恵をもたらすのだ。
せわしない日常にいろどりを落とし、それはきっとすぐに消える。
その木に柿がなることも、目に映ってもきっと見えてはいないのだ。
門の前で先生とあいさつをし、昇降口で靴をかえ、階段を上り、教室の戸を開ける。
午前8時6分、いつもどおりの朝。
そこかしこでささやかれる今日でなくてもよい話題。
――俺はこうして、見逃される朝をはじめる。
1時限目の国語は担任の、通称”子守唄ボイス”で時をながす。
ノートをとる手は睡魔に襲われ、まぶたは重力に耐え切れない。
窓から見える景色は穏やかそのもの。
時折そよぐ涼しい風は、睡魔を応援しているようですらある。
うとうとしながらやっとの事で1時限目を終えると、その日はあっという間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます