第2話 何をやっても続かない時期①

2008年。

僕は日雇い派遣で働いていた。


大学生活にはなじめなかった僕は、3年目を迎える前に退学している。

友達といえる人間が数人いたものの、基本的に人付き合いが苦手な僕は彼らと学校の外で一緒に遊びに行くというようなことは稀だった。

入学して2年がすぎても、週末の予定はなにもなかったし、積極的に人の輪に入ろうともせず、孤立していた感があった。

勉強にも打ち込めないでいた。

卒業して就きたい職業があった訳でもないし、大学での目標もなかったので、そもそも自分は何で大学へいるのか疑問に思い始めていた。

目標がないから勉強に打ち込めないのか、それとも勉強ができないがために熱中できるような目標を設定できないでいたのかは分からない。

ただ言えるのは、漠然とした将来の理想像を思い描けたとしても、それを実現できるとはとても思えないので目標にはできなかった。

もうこの頃すでに将来に対する諦めが入っていたように思う。


寮から学校を往復するだけの毎日に失望し、朝目覚めるたびに溜息がでていた。

うんざいしながらも、それでも今日くらいは機嫌よく一日を始めよう、そう自分に言い聞かせながら、

何とか通学しようとして部屋を出来るのだが、

いざ一歩外へでてみると、いつもの「うんざいりしている自分にうんざりしている」という

昨日と同じままの自分しか確認できなかった。

そして2007年の夏、そのうんざり感が限界に達した頃だと判断した僕は、

大学を辞めた。


寮を引き払い、実家へ戻ったものの、就職する当てはまったくない。

中退した人間にまともな就職先もないだろうことも分かっていた。

また実家に世話になっていたのでは体裁も悪い。

自立した生活はしたいと思っていたので、働こうという気にはなっていた。

コンビニに置いてある無料求人誌を全種類持ち帰ると、近所の町工場や運送会社の求人が多く掲載されていたため、

数社へ面接を申し込んだ。

幸い仕事はすぐに決まった。


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