自殺部隊-Tea Break-

啄木鳥

最弱の男

とある路地にて、激しい銃声と、くぐもった銃声の交響曲が流れていた。


対峙しているのは3人の男。もっとも状況は2対1のようだが。


男A「おいおいおいおいおい!俺らを潰すって言うからどんな腕自慢が来ると思ったら……話にならねぇほど弱ェなぁ!おい!」


男B「全くもって同感だァ……。自殺部隊、とか言ったか?裏ではそこそこ有名らしいが…まさか俺らの足止め担当クンがこんなに弱っちぃとは案外大した部隊じゃねぇのかもな」


言われ放題のガスマスクにフードの男、自殺部隊員ちひろは、満身創痍であった。

致命傷こそないのだが全身に銃弾による擦過傷がいまもどくどくと血を吐き出している。


男A「ったく…悪ぃがとっととぶっ殺してアンタらのお仲間もぶち殺させてもらうぜ。ま、悪く思うなや」


既にぼろぼろのちひろを見て、勝機と見たのだろう。光学機器が搭載されたMP5を構え、引き金に指をかけるまでの時間は、あまりに遅かった。

MP5が9×19mmパラベラム弾を吐き出す前にくぐもった銃声が2発。

引き金にかけた男の指が吹き飛び、余裕そうに佇んでるもう1人の男の膝に穴が空いた。


男A「ッッッ!?なっ、てめぇやりやがったな!」


男B「くそが!てめぇ今すぐ殺してやーーー」


「さすがに、舐めすぎだぜ」


男Bがサプレッサー付きのMP5を構える前に、距離を詰めたちひろが腹部に蹴りをくらわす。

そのすきにちひろは更に細い路地に身を隠した。


男A「くそ…あいつ死ぬかどうかの瀬戸際まで実力やを隠してたのか…?」


吹き飛んだ人差し指の根元を外した靴紐で止血しながら男は言った。


男B「いや、あいつの蹴り…怯んじまったが恐ろしく威力がなかった…元々戦闘タイプではないのは確かだ。次はおしゃべり無しだ。見つけ次第殺す。だがこの足では…」


45口径に貫かれた男の膝は完全に関節を砕かれていた。


男A「…奴はこの細い路地をどこかに逃げながら俺らを迎撃するつもりだ。俺が奴を追う。なるべく、この道に誘導するようにだ。俺が殺しきれなくとも、お前がここに待ち伏せして、やつを殺せ。」


男B「あぁ、わかったこの路地でアンブッシュしておく」


男A「よし、状況開始」


光学機器搭載のMP5を持った男Aは、最初にちひろが逃げ込んだ路地裏の闇に飲まれて行った。

男Bには、それが大きな怪物の口に見えた気がしたが、相棒の言う通り、いつここに戻ってこられても殺せるように、足をかばいながら銃を構えた。

ーーーーー


ーー20分経ったが通信はおろか銃声すら聞こえない状況に、男Bは戦慄と恐怖を覚えていた。


もしかしたら、ガスマスクの男はもう既に逃げ出したのではないか?それか、男Aをうまく巻いて、他の仲間に合流したのではないか…


そんな思考が男Bの頭を巡る。どちらにせよ、20分間何も状況が変わらないのはどう考えても異常だ。


男Bは撃たれた膝をかばいながらそれでも立ち上がり、静かに裏路地の方へ歩き出した。状況がどうなっているのか、確認しないと頭がおかしくなりそうな静寂だった。のだが。


ーーードサッ!!


男Bは素早く振り返りながら、後方から聞こえた音の正体をみる。それは裏路地から倒れてきた、黒フードにガスマスクの男だった。倒れた地面にはじわじわと血が広がっているが、どうやらまだ生きているようである。


男B「……は、はははは!!!随分とボロボロになったなぁおい!!!は、ははは、やっぱりあいつが死ぬわけねぇ…。大方、追い回されてボロボロになってここまで来ちまったんだろ?残念だなぁ、てめぇは追い込まれたんだよ!!俺がこの場で引導を渡してやる!!」


虫の息であるガスマスクからは返事はない。

その横たわった身体に、男BのMP5がフルオートで弾丸を吐き出し始めた。


男B「ははははは!!!はーはははは!!!!しね!!しねぇぇえ!!」


「ところで。」


ピタッと、男Bの動きが止まる。後ろから聞こえた声は、銃口をピタリと男に向けていた。


「お仲間の身体に風穴あけまくる気分って、どう?」


男B「な…………おまえ、まさか…」


男Bによる乱射を受けたガスマスクはいつの間にか砕けていた。その隙間から除く顔は紛れもない、男Aのものだった


「そのとおり、なるべく死なないように、致命傷を避けながらあいつをボロボロにして、動けなくなったところで、ぼくのコートとガスマスクを被せてここに蹴り入れたんだよ。いやぁ、まさかあぁも高笑いされながら撃ちまくられるなんて…彼もびっくりだろうね」


男B「なっ………貴様…きさーーーーー」


男が何か言う前に、くぐもった銃声が響いた。


「やれやれ。出血多量で今にも倒れそうだけど、久々にこれは勝利っていってもいいんじゃないかなー」


???「動くな」


「………あれ、お仲間さん?」


男C「貴様、よくも仲間を手にかけてくれたな。」


「(まずい。いまから振り返って撃つ前に、絶対撃たれるこれは殺される。)」


男C「死ね」


そして鳴り響く銃声。倒れたのは男Cだった。


骨「ちーちゃん足止めおつかれー。またぼろっぼろだね」


ぴの「まったく、ぼくらがもう少し遅かったら死んでましたよ?」


銃口から煙を昇らせるXDMを持った骨とぴのは、蟷螂に任務終了の連絡をいれる。


骨「それにしてもまったく、こんな奴ら相手そんなにボロボロになって、あげく殺されかけるとはさすが最弱だなぁ」


ぴの「まぁまぁ、足止めの役割は果たしてくれたんだし。まぁ、それにしたってもっとスマートに出来ないのかなとは思いますけどね。」


「あはは……まぁ、負けなかっただけ……ほめ…て」


出血多量でぶったおれたちひろに、骨はため息をつく。


骨「あ、もしもし殿?負傷者1名連れて帰るから、準備しといて。うん。いつもの。そう。ちーちゃん。」


通信を閉じた骨はぴのにちひろを担がせ独りごちる。


骨「今日もいつも通り、か」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る