第八話 エルフ森へ行く

エルフが住んでいる森は神の森と呼ばれるところだ。

数多くの妖精が住み続ける太古の森。エルフの住む神の森の前には、クマ族と呼ばれる褐色の肌と屈強な肉体をもつ人族が住んでいる。

クマ族はエルフ族を崇め奉っているため、クマ族は基本、エルフならば攻撃はしない。

俺はベルを背負い(ベルの胸が俺の背中に接触)、クマ族の住む集落へとやってきていた。

神の森からクマ族の集落まで、聖なる泉が湧き出ている。聖なる泉は基本どんな怪我にでもきく。まずはベルの足を治そうと、俺はやってきた。

普通ならば俺くらいの強大な魔力があれば、回復魔法ができそうなものだが、回復魔法を司る女神に俺は嫌われて呪われてしまっている。

俺が回復魔法をとなえると、なぜか俺の寿命が縮むのだ。

もとはといえば女神の胸を揉んだ俺が悪いのだが・・。てっきり女神ならばOKだと思い込んでいたおれが悪いのだが。

まぁ話にきくと、回復の女神の他、回復させたいのならば、修復の魔法もあるらしいのだが、超絶難しいらしい。どうやってやるものなのか?金を払えばエルフの誰かからかおしえてもらえるのかなと、俺は考えているうちに、クマ族の集落についた。


「エルフ様」


 クマ族の集落まで来ると、族長の証の白い羽をつけた七十くらいの男、今のクマ族村長のエメラが、俺とベルのことを出迎えてくれた。


「ベルの足の回復を願いたい」


 俺はエメラに向かって、ベルの腫れ上がった足を見せた。


「畏まりました」


了承してくれたエメラに、俺は袋に入れた前金を手渡す。


「これを」


エメラは俺に向かって頭を下げ、「どうぞこちらへ」と、布で覆われた住居へと招いた。

遠くから狼の遠吠えがきこえてきて、俺は溜息をついた。

この森の狼とは俺は知り合いなのだ。俺はオオカミの言葉がわかる。狼は俺に向かってこう遠吠えしている。


『ぺろぺろしたい』とー…....。


2


香をたいた部屋の中に案内された俺とベルの前に、お茶を出された。クマ族に伝わるお客に出す苦蒸し茶だ。名前よりもこのお茶は美味しい。俺はずずっと、お茶を飲む。


「準備をしますゆえ、しばしまたれよ」


エメラは村の男に指示をし、俺とベルを座るように促した。その間にもしつこくうるさく狼どもの遠吠えがする。

うるせえ

にこにこ俺の前に座るエメラは笑う。


「ほ、ほ、ほ。テスラ様が帰ってくると、狼が騒ぎますなぁ」

「あいつらしつこい」


 俺はいやぁな気分になる。


「テスラ様は狼に懐かれているんですか?」


 不思議そうなベルに、俺は溜息を吐きつつ事情を話すことにした。


「昔な、怪我をした死にかけた狼の子供を拾ったんだ。俺は狼だとは当初知らなくて、犬っころをひろったと、喜んでいたんだがな」


 そこまで言いかけて、天幕の外から悲鳴が上がった。一匹の見事な銀色の毛並の狼が、室内に乱入してきた。狼は俺に飛び掛かってくる。


「うわっ!やめろ、ワンコ」


 狼は人よりも少し長い舌を伸ばして、俺の口の中に入れようとしてくる。狼の挨拶は舌を、人の口の中に入れることなのだ。(本当)


「うわ!っくっせ!」


狼の唾液は臭くはないが、なんか狼の唾液は汚く思えて厭だ。そうこうしている間に、他の複数の狼が天幕の中に入ってきて、俺のことを押し倒す。

 べろんべろん狼の舌が、俺の顔を舐めまわす。


「くっさい!お前らはなれろ!!(怒)」


 狼の姿で俺のことを舐めまわしていた奴らは、少し経つと人間の姿になった。そうこいつらはただの狼じゃない。狼から人に姿を変える狼人間だったのだ。人間の姿になった狼たちはもちろん裸だ。ぷるんぷるんの狼少女の胸が俺の顔やら体にあたる。俺は狼とピーをするつもりはない。忍耐がちょちょぎれそうになるが、俺は必死に我慢する。

狼の雌ならばまだいいが、問題は雄である。銀髪のアイスブルーの少年(男)の姿の狼に、ぺろぺろされて俺は悲鳴を上げた。

 ちなみに俺が拾った狼のことを、「ワンコ」と名付けた。ワンコは元気に俺に懐いてぺろぺろしている。


「ぎゃぁああああああああああああああ」


俺は悲鳴を上げた。

狼と濃厚ちゅちゅをする趣味は、俺にはないのだった。ベルよ、にこにこしないで、助けてけろ。


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