第七話 人間の国


人間の国の今のところ大きな国は、五つの国に分かれている。その中でも東のもっとも大きな国というと、アラストル帝国だ。

アラストル帝国の現国王のストラスは、玉座の上で溜息をついた。ストラスは宰相のエルフのエルトランから、横領犯人ベル姫の行方についての報告を受けていた。


「ベル姫は漆黒の髪を持つエルフとともに、逃亡中とのことです」

「黒髪のエルフか・・・。エルトラン、お前知っているか?」

「いえ」

「あの・・・」


聖騎士のエルベルが、苦虫をかみしめたような顔で、国王とエルトランの間に口出してきた。

エルベルは侯爵家の娘であり、この国最強の騎士だ。しかもエルベルは美女だとたいそう人気があった。エルベルが顔を歪めるなんて珍しい。いつもクールビューティーなのにと、ストラスは内心面白がる。


「同一人物か知りませんが、闇の幻術をつかって女風呂を覗こうとした黒髪のエルフなら今から一年前ぐらいに出会ったことがあります。そのときは一瞬のすきをついて逃げられましたが、許せずにずっと追っています」

「・・・・・・・・そうか」


ストラスは何と言っていいか分からず、戸惑う。


「このエルフの恥が」


エルフのエルトランが吐き捨てる。


「情報によると、その黒髪のエルフは町で片っ端から女に話しかけているそうです」

「そのエルフは、ベルに血迷ったのかもしれんな」


なんだか国王はつい、犯罪者とはいえその黒髪エルフに同情してしまう。


「アルジュナ様が動いているようです。ベル様の命が危険かもしれません」


エルトランの忠告に、ストラスは溜息をつく。アルジュナはストラスの母親だ。亡き前国王の愛人の子供を途絶えさそうと、暗殺者を送っている。


「どうせベルは罪状から死罪の可能性が高いのにな」

「国王様。なんとかベル様の罪を軽くなることはできないでしょうか?ベル様は、ばヵ、いえ、騙されただけなのでは?」

「お前、ベルのことを馬鹿だといいそうになったよな?確かに同情の余地はあるが、それでは民への示しがつかん。王族が国税を使いこんだだの噂が立ってみろ。いつ反乱がおこるかわからん。諦めるしかない」

「・・・・・」

「ベルが可愛い娘だ。なんとかしてやりたいが、無理だ」

「陛下、黒髪エルフについては、この私目にお任せください」


エルベルがストラスに向かって膝をつき、敬礼した。


「好きにするいい。だが、エルフは生け捕りにするように。エルフの国との兼ね合いもある。いい切り札になるかもしれん」

「は」

「下がれ」


ストラスの言葉に、エルベルは逆坐の間から下がって行く。


「頭が痛い」


ストラスは頭痛がする頭を揉んだ。


「国王様、薬師に頭痛薬を出させます」

「頼む。エルトラン、お前は情報部隊を動かし、黒髪のエルフについて調べよ」

「御意」

「エルフとあまり揉め事にはするな」

「御意」

「行け」

「失礼いたします」


エルトランは頭をさげ、玉座の間を辞した。


 エルトランは情報部隊に黒髪のエルフについての情報を集めることを指示した。エルトランは自室にもどり、部下の鷹の精霊のエボシに話しかけた。


「黒髪のエルフについて調べよ」


 王族専属の情報部隊はもう動いている。エルトランは個人で黒髪のエルフについて調べることにした。

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