空から見る星は、儚く悲しい顔をしていた

後藤 悠慈

天使は大地に落ちる

 天から落ちる

 ひたすらに落ちる

 空を上から切り裂き大地へ落ちる

 天使であっても落ちる

 夜明けまでまだ時間はあるが落ちる

 人間であれば寒さで死ぬだろうが天使の私には無縁の感情で

 数少ない感情を働かせ宇宙そらの星々を眺め、落ちる

 時折、大地を仰ぎ見ると果てしない三つの無限な大地に点々と星がきらめく

 上も下も星々が輝く今の世界を独占する贅沢を感じながら落ちる

 あの大地には、顔も知らない、会ったことのない元家族が大勢いて

 羽を返上してもなお人間離れした力で各々の信じる正義のために戦う中、私は落ちる

 

 心地よい暴風に身を任せながら落ちる

 天使には基本の使命があるが、私は特別な使命を与えられていると思い返しながら落ちる

 もう疲れたから落ちる

 無駄だと分かっていても落ちる

 落ちる

 

 ふと星の海から誰かが羽を羽ばたかせ高速で落ちてくる

 そのひとは私に近づき手を掴む

 そこで気づく私が知ってる家族

 孤独を悲しみながら楽しむ私のそばにいてくれた姉

 大丈夫と姉は言う

 大丈夫じゃないと私は言う

 私がついてると姉は言う

 迷惑をかけると私は言う

 迷惑かどうかは私が決めると姉が言う

 そして急激に星の海へ私を引っ張っていく

 今の私には良く分からない

 なぜここまで私のそばに居てくれるのか

 言うと居たいからと言う

 本心では、私も居たい

 いやもう素直になるべきなのだろう

 私も一緒に居たいと言う

 姉は私に微笑みかけ一緒に行こうと言う

 私は羽を大きく羽ばたかせ、天へ落ちる

 朝日だよと姉は言う

 空は優しいオレンジ色へどんどん表情を変え三つの世界を起こしに来る

 これから私は姉と一緒に戦う

 姉は一柱で一つ私は二柱で一つ

 考えを変えた私を祝福するように、優しい光を当ててくる

 もう弱気に逃げないと決めた私は

 天へと昇る

 

 



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