第2話日本人と切腹
フクロウが一番近くの高さ5メートルほどの檻に近寄っていく。
私たちはそれについていって檻の周りを囲い込み、こちらを見返す黄色(おうしょく)の人間たちを観察する。
「あの檻には日本人がいます。そうです、あの東洋の島国の日本です。飼育員はニホンザルですね。故郷が同じなせいかなんとなく気が合うところもあるらしいですよ」
「さて今では彼らは外見に大きな特徴のない黄色人種に過ぎないかもしれません。しかし彼らは今から何百年も昔、切腹という独自の文化を持っておりました。自ら日本刀で腹を切ることで名誉のために自殺し、時に主君に対しての罪を償い、己の人生の最後に美意識を見出していたのです。なんと恐ろしい、しかしユニークな文化なのでしょう!」
「当たり前ですがいつでも丸腰で飼育しておりますよ。切腹の公開ショーなんて非動物的なことはもちろん致しておりません。ご安心くださいね」
私は説明を聞いて呆気にとられてしまった。
切腹?自殺?美意識?私にはこの日本人という人々が遥か遠くの惑星からやって来た生物のように感じられた。世の中には何とも凄まじい生き物がいるものだ。
それがあくまで現在の話ではないとしても。
日本人の紹介は切腹がメインであるらしく、フクロウは次の檻へとみんなを誘導していった。
まるで背中で、さぁまだまだ人間の業が見えてくるのはこれからですからね、とでも言いたげに見えた。その無言の圧力は私の気のせいかもしれないが、足元にうすら寒い空気を運んだ。
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