人物園ツアー
秋茄子
第1話人物園ツアー
「ようこそ人物園へ。私がツアーガイドのフクロウです」
「当園は初めてでございますか?ご存知かもしれませんが、ここでは全世界津々浦々の人間が飼育されているのですよ。なんと今年で380周年という、歴史ある人物園なのです」
案内役の白いすらっとしたフクロウは、いかにも博識そうな雰囲気を漂わせながら、淀みない声でそう言った。
私は人物園というものを訪れるのは初めてだ。
人と言うものを肉眼で見たことすらない。
学校の資料集で写真を見たことがある程度だ。
20人ほどのツアー参加客の動物たちを引き連れながら、フクロウが不思議なくらい静かな羽根の音をたてながら、人物園の入り口付近まで観客を誘導した。
様々な花々や草木が整った形で園内を彩っている。腕のいい庭師のような動物がいるのだろう。
景観のいい庭園としても入場料が取れそうなくらいだ。
フクロウがツアーの前口上を述べる。
「さて皆さん。人間という生き物は実に特殊な生き物です。人種だけでも数百種類いますし、とても器用なので様々な環境に適応できる生き物です。しかし少なくとも現在、我々の生活圏内には人間は全く生存していません。なぜ人間がこのように完全に我々動物の飼育化に置かれ、野生の人間は絶滅したのか・・・」
「それは我々の先祖がすべての謎を知っているはずです。しかし我々には文字という文化がないために、そして何百年という余りにも長い時間が経ってしまったがために、そのあたりの事情というのはかなり曖昧になってしまっています。残念なことですが」
私はふむふむと頷きながらフクロウの口上の続きを待った。
「しかし百聞は一見に如かず、です。園内には様々な人種があなた方を待っています。さっそくこの近くの檻から見学ツアーを開始いたしましょう」
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